第6章:女の決意・男の勘違い
第29話:超高層建築物
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気にしている様子は無いのだが、周囲の私達が気を遣ってしまい過去を避けるようにしている。
逆に失礼なのかもしれないが、耐えられない身内がここに居る。
「物好きねぇ……美女でも大量に存在したの? ここよりも空気の薄い所で10年間も働くなんて……」
殺意が込み上げてくる……裕福な環境で育ったお姫様が、何も知らないリュカの事を嘲るのは!
思わず何かを叫ぼうとしたのだが、リュカの手が優しく私達家族の事を押さえ付ける。
「美女は……偶に居た。でも奴隷だったからねぇ……みんな薄汚れてたよ。それに口説く時間を作れないくらい働かされてたから、希望を言えばあんな場所に10年間も居たくなかったね」
「奴隷!? ちょ、ちょっと……それって王族であるリュカが組織した奴隷集団!?」
「本当に君は馬鹿だなぁ。どうしてあの話の流れで、その結論が出てくるんだよ? 僕も強制労働させられてる身だって伝わらなかったの? 王族としてその場所に居たのなら、嫌々10年間も強制労働をするわけないじゃんか! 僕もその当時は奴隷だったんだよ。6歳から16歳の10年間……友達と逃げ出すその日まで」
「嘘……リュカが……奴隷……!?」
本当に馬鹿な娘だわ。
他人の強さに憧れて、同じ事をすれば自分も強くなれると思い込み、他人の過去に土足で進入するお姫様……
これは私の偏見かもしれない……でも、生まれた時からお姫様として育てられてきた娘に、リュカと同じ生き方が出来るわけも無く、またその真似事だって可能だとは思えない。
リュカだってヘンリーさんが居なかったら、生き抜けたか判らないと言った事がある。
皆が多少は自分の事を不幸だと考えている。
アリーナさんは、ご家族や城の方々が行方不明になってしまったし、シン君は育ててくれた家族や村の方々を目の前で失ってしまった。
マーニャさんやミネアさんだって、お弟子さんの裏切りでお父さんを失ってしまったのだし、誰もが順風満帆の人生を歩んでいる訳ではないだろう。
私だって、故郷から逃げるように出て、早くに母親を失った事が不幸だと感じた事もある。
不幸を不幸だと思う事に問題は無い。
でも不幸に酔う事が正しい在り方だとは思わない。
リュカはそれを常に示しているわ。
自らが人質になった所為でお父様を目の前で殺され、後に10年間も幼い身体にむち打たれ強制労働を強いられてきた。
にも拘わらず、常に前向きな姿勢で人生を歩んできたリュカ……
トラブルメーカーと呼ばれ周囲から顰蹙を浴びながら、その事で皆を纏め上げる手腕。
自らが道化と化し、周囲には規律を守らせる体勢を築き上げたリュカ。
家族や仲間を守る為なら、どんな誹謗を浴びようと気にしない男!
知らぬ事とはいえ過去を掘り返してしまったアリーナさんや、常に疎ま
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