オリジナル/未来パラレル編
第28分節 強さ⇔弱さ
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
その日も光実は勤め先の神社で忙殺されていた。
裏方はとかく気を回さねばならない事柄が多い。今日は特に、神前結婚式がある日なので本殿の飾りつけや設営で忙しかった。
「――あ」
拝殿の正面口のガラス越しに見えたものに、光実は手を止めた。
「どうしたの、ミッチ」
巫女服で作業をしていた舞が、朱三宝(銚子や杯を載せる台)を置いて光実の横にやって来た。
「雨が降ってきたみたいです」
灰色の空から落ちた水滴が、徐々に玉砂利を濡らしていく。
神道は自然の一つ一つに神を見出し、その恵みに感謝するのが特徴である。雨もまた感謝すべき自然の恵みだと、神社に勤めてから漠然と分かってきた。
「ほんとだ……あたし、ちょっと行ってくる。もうご親族の方、下に着いてるだろうから。傘持ってくよ」
「袴の裾、泥が撥ねないよう、気をつけてくださいね」
「ん、ありがとっ」
舞が本殿の脇戸から出て、草履に履き替えて走っていくのを笑顔で見送り、光実は改めて空模様を見上げた。
「――イヤな雨」
一言だけ呟き、舞が置いた朱三宝を代わりに運んだ。
………
……
…
『やああああああっっ!!』
双刃を両手に構え、月花は戒斗に向けて駆けた。
戒斗はニヤリと笑ってオーバーロード態に変身した。
降りしきる雨の中、月花と金色のオーバーロードが切り結ぶ。
例え戒斗が相手でも、月花が簡単に弾かれることはない。昔なら力で負けていただろうが、9年に渡って戦い続けた咲の腕力と膂力は成人男性とほぼ変わらなかった。
一度離れて踊るように連撃する。今度の彼は回避行動をとらず、杖剣で地面を突いた。
すると突如として、野外劇場の隅に生えていたヘルヘイムの蔦が急成長し、金色のオーバーロードの正面で編み込まれて盾を形作った。
『そんな小細工!』
月花は双刃で蔦を斬り裂こうとした。しかし、振り下ろした双刃の片方で、蔦は、切れなかった。
逆に蔦はもっと伸び、腕に絡みついた。驚いて、その驚きの瞬間を、月花は隙としてしまった。
金色のオーバーロードが月花の前に立ち、月花の顎を下から蹴り上げた。
『ギッ…イ゛、あぐ!』
蔦がほどけて、その場に崩れ落ちた月花。その月花の背を金色のオーバーロードは踏みつけた。
腕の支えが間に合わず、月花は地べたに這いずる形となる。
このままでは骨を折り砕かれる――!
横ざまからソニックアローが飛んだ。
金色のオーバーロードはそれを避け、月花から離れた場所に立った。
『咲、大丈夫か!?』
駆けつけてきた鎧武が月花を支え起こした。
『コウタ……』
い|つ《・
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ