第一部 vs.まもの!
第1話 かんおけ!
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。六人いない計算だな。その不在の六人には、あの学者風の少女と、もう一人の学者風の青髪の男も含まれている。
「勇者ウェルド! 君を待ってたんだ!」
騎士の青年がよく通る声で言った。
「勇者ぁ?」
ウェルドは顔をしかめる。
「てめぇ、おちょくってんのか?」
「とんでもない! 僕は君に敬意を表してそう呼ばせてもらってるんだ」
騎士の青年は急に目の前に出てきて、ウェルドの両手を掴む。
「僕はアーサー=ルイトガルド、ビアストクから来た。この町に来るのが小さい頃からの夢だったんだ! 『アザレの石』を見つけて病に苦しむ民を助けたいって!」
「へ、へぇ……」
「不安もあるけど、これが僕の使命だと思ってるよ。それがこの町に来る前から大変な目に遭って、窮地を救ってくれた君には感謝してもしきれない!」
「お、おう。そうか」
そして、馬車で聞いたのと同じ忍び笑い。銀髪の女だった。
「あんたは?」
ウェルドは質問を機会にアーサーの手を振りほどく。
「あたしはイヴよ、よろしく。来た理由は特にナシ。自己紹介はこれでいいかしら?」
「なし……? 君は理由もなしにこの町に来たのか?」
と、アーサー。
「いけないかしら?」
「いや、いけないわけじゃないけど……信じられないな。目的や理由もなしにこんな所に来るなんて」
「あら、つまらない事を言う騎士サマね。あなた、さっきの『使命』とやら、本気で言ってるつもり?」
「も、もちろん」
「あ、そ。じゃ、それについて語るのは今日この場で最後にして頂戴。聞いてて退屈だから」
「あ……ああ……」
階段に腰かけている弓使いの少年に目をやると、彼は長い灰色の髪の束を揺らして立ち上がった。
「俺はパスカ。アスロイトから来たんだ。別に紹介するような事はねえけど、ま、とにかく頑張ろうぜ」
アスロイトから来た弓使い。質素な服からして、恐らく狩猟民だ。来た目的など、その恰好を見ればわかる。金を稼ぎに来たのだ。どこの村も貧しいから。そして、この町にいる大半の人間の目的が、やはり金稼ぎだと聞く。パスカは続けた。
「あ、そうだ。お前の部屋もう決まったからな。ここのすぐ左の部屋。そこしか余らなかったんだよ。遅れてきたお前が悪いんだからな」
「そんな言い方ないよ。ウェルドはあたしたちを庇って怪我をしたんだよ?」
と、栗色の長い髪を高く結い上げた少女が口を挟む。
「あたしはシャルン! ウェルド、さっきは本当にありがとう。これからよろしくね!」
その声に聞き覚えがあった。
「あんた確か、最初に幌を開けてくれたんだよな」
「覚えててくれたの?」
「耳だけはいいんでね」
「あの、ウェルドさん、お怪我のほうはもう大丈夫なんですか?」
白いエプロンの少女がシャルンの後ろから顔を出して尋ねる。
「ああ
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