第一章
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第一章
辛い思い出も
卒業から数年が経って。彼はそこに一人戻って来た。
校舎はそのままだった。グラウンドも花壇も何もかもがだ。彼の思い出の場所はそのままだった。
そうした思い出の場所を一人で歩いていく。校門のところもだ。
校門のところでだ。彼は思い出したのだった。
告白してそれが適えられず、それどころか。
告白するようにけしかけた友人達は振られた自分を責め彼の前から去った。そして振った娘は彼を不細工だの太っているだの言って怒ってきた。
彼は何もかもを失った様に思った。耐えられなかった。その時ばかりは目の前が真っ暗になってしまった。
その校門でだ。振った女の子と彼女の友人達が待っていてそうして。
聞こえる様にして陰口を言ってきた。そのことが辛かった。絶望の中に落ちてしまった。
そしてだ。学校の階段のところでだ。
彼を最も責めていた女の子がだ。階段の上から彼を糾弾した。彼は階段の下にいた。
女の子の周りには他の女の子達もいた。彼女達は冷たい笑顔で彼を見下ろしていた。その時のことも忘れていなかった。忘れられる筈がなかった。
このことをいつも誰かに言われるのではないかと身構えてそして言われてその度に心に辛いものを感じて。そうして学園生活を送ってきた。それが彼の高校生活だった。冷たい目で見られることも、裏切られることも、馬鹿にされることも、罵られることも、陰口を叩かれることも、全て経験してきた。彼はそうした経験を一通り知ったのだ。
何とか卒業して大学に入って就職間近になって。その高校に戻って来たのだ。
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