第十一章 追憶の二重奏
第五話 手がかり 氷の女帝
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も、あちらの世界も滅びてしまう。
だけど、『門』から流れ込む魔力のせいで、開いた場所まで行かなければ閉じることが出来ない。たどり着くには、奴らが何時、何処で現れるか分からない中を進まなければいけない。
たどり着いたとしても―――』
二、三度と読み返した士郎は、書かれていた文章を何度も頭の中で咀嚼する。
『門』に『抑止力』……か……。
これだけで確実に当たりだとは断定はできないが……。
しかし、これを書いたのは一体誰だ?
『変わった系統』?
いや、それよりも問題はこの日記を書いた者に『抑止力』のことを教えた者の方か。
士郎が思考の渦に飲み込まれている中、タバサはその隣で何処かから持ち出してきた本を開いて読んでいた。時折、隣の士郎を何度もチラチラと見ていたタバサの身体が、次第に士郎に近づき始める。
考え込んでいる士郎はそれに気付かない。
士郎とタバサの身体の距離が、後ほんの数センチの距離まで詰まる。
―――瞬間
「―――ッ?!」
「―――っひぅ?!」
タバサは横抱きにされ、宙を飛んだ。覚悟やら意識の外から受けた衝撃に、タバサの口から思わず奇妙な声が漏れてしまう。その声は士郎の耳に確実に届いてはいたが、士郎の意識は全く別のところに取られていた。それは士郎が自信が先程まで立っていた位置に人影。その人影は魔法の明かりが届かない部屋の中、天窓から差し込む星明りによりぼんやりと浮かび上がっている。
「―――っな、何だコレは?」
士郎は目の前に転がるボロボロの姿の人影に、動揺した声を上げる。
顔は明かりから外れているため分からないが、顔から下はいたるところが焼け焦げ、肌にはミミズ腫れのような跡も見える。ぱっと見……どころか何処からどう見ても死んでいるようにしか見えないが、時折微かに指先が震えていることから生きてはいるのだろう。
「……これ、は、大丈夫なのか?」
「……ん、生きてはいる」
士郎の手から離れたタバサは、じっと感情の見えない視線で屍の如く転がる人影を見下ろしポツリと呟く。
確かにタバサの言う通り生きてはいる。だが、だからと言って大丈夫だというわけではない。
肉体的には大丈夫であったとしても、精神的には大丈夫ではないことがままあるのだ。
「しかし、こいつは一た―――っ!!」
人影に一歩近づき立ち位置を変えた時、士郎の目に天窓から差し込む明かりに照らされた倒れ込んだ人影の顔が飛び込んだ。その顔を見た瞬間、士郎の口から驚愕の声が上がる。
「ッ!!? ぎ、ギーシュッ?!」
倒れ伏すそれが、ギーシュであることに気付き、近寄ろうとした瞬間、士郎の背筋を氷の刃が貫いた。
「―――ッ!!
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