第四話
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優先する。個人としては真面目と言えようが小隊員としては不真面目極まりない。
真面目さというのが欠落した人員。個人ではなく小隊としての練度ならば確実にどの隊よりも低い。他の隊からもそれを指摘されたことはある。
その現状に孤独感を感じたことも何度もある。
どうしてそうなったのか。それを考えようとし、ニーナは直ぐに放棄する。今それを考える時ではない。
脳裏を走るのは迷いだ。
勝てないかもしれない不安。未熟な小隊としての苛立ち。それらではない。
勝つ手立てならある。その為の各々の役割も考え、ニーナは皆に話してある。今日の立場なら上手くいけば勝てる可能性は十分にある。
だからこそ、迷う。
誰に聞くでもなく、ニーナは閉じた瞳の暗闇に問う。
その手段をとっていいのかを。
負けていい理由はない。それを思うなら小隊など立ち上げるべきではなかった。
ツェルニの境遇を思い、二年前の悔しさを積み重ね、今日まで来た。
しかし過去の過ちが、嘗ての記憶がニーナに問いかけてくる。また同じことをするのかと。
他の誰かがするのならいい。だがニーナが、ニーナ・アントークがそれをしては同じ結果になるかもしれない。
「……」
こんなことをしたかったわけじゃない。昔も今も、一度だってニーナはそんなつもりはなかった。ニーナ自身が抱く理想は依然として変わりはない。
はなから答えは決まっている。負けていい理由がなく、小隊として劣っているのならそうするしかない。いずれは直るとしても今日はそれしか手段がない。
だが、事は今日が問題なのだ。次があるかどうかなど論じる意味がない。
だからニーナは迷う。既に出ている答えを、迷い続ける。
迷って、準備をし続ける。
目の前に迫る現実に、ニーナ自身が耐えるために。
「お呼びがかかったぜニーナ。そろそろ行こう」
「……ああ」
シャーニッドの声に呼び起こされ、ニーナは閉じていた瞼を開けて立ち上がる。
部屋を出てグラウンドへと通じる通路をニーナは先頭に立って歩いていく。
「作戦は変わりない。各自全力を尽くしてくれ」
「まあ、いつも通りに頑張ります」
「フェリはもっと頑張ってくれてもいいぞ」
「自分の役割は全うするさ。今月厳しいんだ」
「よく分からんが頼むぞアイク」
「気張ってもしょうがないぞニーナ。適度に肩の力抜いてけ」
「シャーニッドは背中を頼むぞ」
通路の終わりにグラウンドの景色が見えてくる。
人口の灯から天然の陽光へ近づくごとに段々と外のざわめきが大きくなってニーナたちを迎えた。
レイフォンとクラリーベルが観客席に入ると既に人が大勢いた。今日だけで小隊戦が四試合あるのだ。最初から通してみている人
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