名探偵ヤン艦長の推理 人形師のお宝を探せ その三
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レイ。
おとなしくしていないと。
すいません。艦長。
こいつ散歩の途中でこっちに走り出して……」
ヤンの思考をかき乱したのは、艦内にて代われているシップドックのアールグレイがヤンに飛びついたからである。
シップドックというのは、元はシップキャットだった。
大航海時代、鼠の被害に悩まされた船乗りたちは猫を乗せる事で鼠から食料を守ると同時に、旅の仲間として大事に扱った歴史があるからだ。
この伝統に犬が入ってきたのはコンピューターが本格的に使われだしてからで、コンピュータトラブルで悪さをする猫が二十一世紀の極東地方の伝承に残っている。
この猫が悪さをするとすべての作戦スケジュールが狂い、提督たちはその襲来を恐れたという伝承の体験者だった人形師は地球文明の復興という事でこのトリビアを広めるついでに犬を乗せる事を推奨したのである。
もちろん、猫でもいいのだが、要するにこの手の愛玩動物によってメンタルケアをと考えたらしい。
だから、人形師が考えた最低限の戦艦人員というのが、『人間一人に犬一匹、アンドロイド一人』という構成で、
「このセットならば、イノセンス溢れる広大な宇宙の海を漂っていけるだろう」
なんて訳の分からない言葉を人形師は残していたり。
なお、シップドックに名前をつける事は艦長の権利であり、シップドックを飼う事は艦長の義務となっている。
そのための従卒もドロイドやアンドロイドにさせればいいのだろうが、ヤンはこの押し付けられた相棒の世話を自分でして気分転換を図っていた。
で、このような作戦時に他の部署に預けるのだが、シップドックに戦争という人殺しなんぞ分かる訳も無く。
「現状、惑星アルジェナ近辺には異常は見つかりません。
よそは色々大騒ぎというのに静かなものですよ。こっちは」
なんて、アッテンボロー戦術長が軽口を叩くが、ヤンはそれが気に入らない。
だからアールグレイの頭を撫でながら疑念を口にする。
「静かすぎる……
サイオキシン麻薬製造プラントは見つかったのか?」
ヤンの質問に緑髪の副官は即座に答える。
ヤンの本当の質問を肯定するかのように。
「いえ。
現在二百五十三の捜査を行っていますが、プラントの発見報告は来ていません」
アールグレイがお座りのまま尻尾を数回振る時間の後、ヤンは意を決して副官に声をかけた。
「戦隊司令部に通信を入れてくれ。
『惑星アルジェナ捜査の為の捜査員及び陸戦隊を派遣を申請する』と」
数時間後、五隻の強襲揚陸艦と共にやってきた男にヤンはため息をつかざるを得なかった。
政治という果てしなく深い深遠からの糸に絡め取られようとしているヤンなど気にする事なく、その男は自己紹介をしてみせたのだ
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