名探偵ヤン艦長の推理 人形師のお宝を探せ その三
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
になったヤンは控えていた緑髪の副官にそれを告げる。
「たしかサイオキシン麻薬についてはフェザーン仲介で捜査協定が結ばれていたはすだ。
そのデータを頼む」
「了解しました」
その声が終わる前にヤンのモニターに帝国のサイオキシン麻薬捜査のデータが出てくる。
帝国が提出した表向きのものだけでなく、フェザーンや同盟が内偵したデータと共に。
そこから出てきたものは、帝国軍の末期的実態に他ならなかった。
帝国兵の三割がなんだかの精神障害を抱え、その多くが麻薬をはじめとした薬に手を出している。
そんな兵達が社会問題として帝国の国政を揺るがす大問題になっていた。
新しい海賊達の母体となった帝国軍脱走兵達は、既に麻薬汚染という土壌の下にあったという暗澹たる現実にヤンは手を頭に当てて目をつぶる。
「これは……ひどいな……
すまない。
ラップ主計長を呼んできてくれないか?」
この手の捜査資料における人と物と金の流れを追うのは主計課の得意分野である。
捜査が始まっている現状で、深い所を探るには時間が足りないと友人に丸投げする事で一旦思考を元に戻した。
(飢餓航路……その近隣に作られたサイオキシン麻薬製造プラント……それを運ぶ海賊……うわぁ……」
繋がったあまりにどす黒い糸に途中から声が漏れた事に気づいて、ヤンはあわてて口を塞ぐ。
その為、戦局が悪化していた帝国軍将兵に蔓延していたサイオキシン麻薬の供給元が海賊達であり、おそらくは同盟政府もそれを掴んで黙認していたという結論は声に出される事は無かった。
それが変わったのも、イゼルローン回廊に要塞がやってきたからだ。
今までより帝国領内に行くのがはるかに難しくなった海賊達はその麻薬を同盟領内にばら撒こうとし、そのからくりを知っていた同盟はその動きを見逃さなかった。
かくして、この茶番……もとい海賊の取り締まりに繋がる訳だ。
(サイオキシン麻薬の供給源がフェザーン企業のプラントだったか。
これは表に出たら荒れるぞ……だから、惑星アルジェナには手を出さないか)
フェザーンの公的資本も出資する宇宙屈指の大企業であるマーキュリー資源開発のプラントなんて現場では治外法権みたいなものだから、隠れ蓑とすればこれ以上のものは無い。
もし、惑星アルジェナのマーキュリー資源開発の鉱山にサイオキシン麻薬製造プラントがある場合、帝国は激怒し同盟もフェザーン感情が急降下するだろう。
(こうなると、こっちにやってくるミューゼル提督の艦隊が無関係とは思えないな。
麻薬がらみで何かやらかした……いや、やらかした連中を追っているのか?)
ヤンの予感は的中する。
ラップの協力もあって、それらしい断片を掴む事に成功したのだ。
も
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ