第27話「麻帆良祭〜贈る言葉〜A」
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実な一撃をタケルの急所に叩き込む。
「……ははっ」
楽しげな声がタケルから漏れ出ていた。
――これが弟の成長を喜ぶ兄の感覚のようなものか? ……いや、そんないいモノでもないのか?
これで何合目だろうか。
いつの間にか、後ろでは刹那たちも見守っている。弾かれたタケルがまたもや、まるでゾンビのように立ち上がり、口を開いた。
「ネギ」
「どいて、ください」
軽く乱れ始めた息も整えようとせず、ネギが動く。
「お前はいつまでそうやっている?」
「……」
空中に身を乗り出し、脳天めがけて振り下ろされた蹴りを左腕で受け止め、ネギの腹部を狙った右腕が振われた。
「お前の真っ直ぐな甘さは美徳だ。それを捨てろとは言わない」
――今回の件は宮崎さんに乱暴されたくなくて、ただ守りたくて危険域の近くにまで来てしまったのだろう。
「……」
捉えたと思われたがネギの両腕によって、タケルは振るった右腕はガードされ、だが凄まじい勢いでそのまま吹き飛ばす。
ネギへのダメージは少ないだろうが、タケルはそんなことを元々気にしていない。
「だが、もう少しだけ……もう少しだけ冷静に、周囲にも目を配れるようになったほうが良い」
――そうでなければ、今のように周囲の人間にまで迷惑が及ぶ。
「…………」
やはりノーダメージだったネギが勢い良く立ち上がり、再度構えなおす。それに合わせてタケルも軽く腰を落とす。
再度、両者がぶつかり合った。
「いいか、ネギ。本当の戦場で最も重要なことは単なる強さじゃない」
――今は、そうやって前だけを見つめて鍛えていても構わない。
「……」
タケルの一撃はいなされ、バランスが崩れたところにネギは蹴りを腹部に突き込み、結果としてタケルは1,2歩下がってたたらを踏む。
容赦なくその隙をついてネギが踏み込んだ。
「大事なのは自分を知り、そして何よりも周囲を見て知ることだ。」
これさえ忘れなければ――
「ネギ。俺がいなくなった後もしっかりと担任……頑張れよ」
――お前はもう、十分に強い。
頂肘をくらい、後ろに弾かれて壁に激突。
「タケル先生!?」
刹那が黙ってみていられなくなったのだろう。タケルの前に立ち、「あとは私が」と呟く。
――その必要はない。
「いや、もう終わるから……大丈夫だ」
すっくと立ち上がり、刹那を柔らかく押しのける。
「し、しかし!」
その顔は心配げに歪み、タケルではネギの拳法に対抗できないことを彼女なりに悟った証でもあった。
――そろそろ、お開き
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