As 08 「届かぬ想い、折れる刃」
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はこれ以上の戦闘意欲はないのかもしれない。
「夜月……もう一度だけ言う。この件から手を引いてくれ。これ以上続ければ、お前の命を奪いかねない」
「何度言われても答えは否だ」
シグナムの選んだ道では、はやてだけでなく大勢の人間が悲しむことになるかもしれない。そうなるのははやてだけでなく、シグナムも望んではいないはずだ。
だから俺は未だに立っていられる。シグナムに迷いがなかったならば、俺はすでに倒されている。いや、死んでいてもおかしくはなかっただろう。
もう止まれないと言っていた彼女だが、心のどこかでは止まりたい。または止めてほしいと思っているのではないのだろうか。そうでなければ、彼女の辛そうな顔の説明がつかない。
「フルドライブ……」
漆黒の刃は、反りのある流麗なものへと姿を変える。それに伴って、鞘も刃に合った形へと変化。
この太刀を握るのは夏休みにフルドライブのデータ蒐集をしたとき以来か。だがあのときよりも、遥かにしっくりくる。こう感じるのは、フルドライブを使用することへの躊躇いがなくなっているからかもしれない。
「シグナム、俺はお前を止めてみせる。そのためなら、命だって賭けてやるさ!」
身体を一瞬漆黒の光が包み、コートやレザーパンツが従来のものよりもぴったりとしたものに変化。バリアジャケットではあるが、現状での防御力はただの布と大差がない。一撃でも直撃を受ければ、即座に負けが確定するだろう。
「……全てを攻撃に回すつもりか。一撃でもまともに当たれば、当たり所によっては本当に死ぬぞ?」
「ああ。でもこれくらいしないと、お前に勝つことはできない」
「…………この少年は覚悟を決めている。その強い想いを打ち砕くには……私も覚悟を決めなければ」
流れるような動きで剣を構え始めるシグナム。彼女は動きが静止するまでの間、目を閉じられていた。
ゆっくりと開かれた目には、先ほどまでの悲しみや迷いは一欠けらもない。今の彼女の瞳にあるのは、俺への戦意のみ。
「夜月……これ以上は何も言わん。決着をつけよう」
研ぎ澄まされた気迫に思わずたじろぎそうになる。……だが俺はひとりじゃない。
一瞬だけファラに視線を向けると、彼女は答えるようにコアを瞬かせた。それを見た俺は恐怖を忘れ、剣を構えながらシグナムに全ての意識を集中させた。
「行く……!」
「――ッ!」
シグナムが前進を開始しようとした瞬間、テスタロッサ仕込みの超高速移動魔法を発動させた。
防御力を攻撃面に回したこともあり、これまでに体験したことがない加速を得る。が、あまりの速度に恐怖を覚えてしまった。
――テスタロッサは普段これくらいの世界を見ているんだよな。
彼女は慣れているというか、これが普通の世界だから何
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