As 08 「届かぬ想い、折れる刃」
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知っている。知っていたのに、何で俺はファラの気持ちに気づいてやることができなかったのだろうか。
〔……私は今で充分に幸せ。たとえ人間らしいことができなくてもいい。マスターが幸せでいてくれるのなら、それだけでいいの。……ねぇマスター、マスターには貫きたい思いがあるんでしょ?〕
〔……ああ〕
〔だったらさ、本気で貫こうよ。ここで本気を出さずに望まない未来を向かえちゃったら、マスター絶対後悔するでしょ?〕
〔……そうだな。でも〕
〔でも、じゃない!〕
いきなりファラの口調が変わった。先ほどまでの雰囲気は全くないと言ってもいいほどに。
〔この際だから言うけど、マスターは優柔不断というか、こういうときだけ欲張り過ぎ! マスターは弱いんだから、何かを得るには何かを捨てなきゃダメなんだよ。はやてちゃんと私、どっちを犠牲にするか決めなさい!〕
〔決めろって……そう簡単に決められることじゃ……〕
〔あぁもう、はやてちゃんのためにあれこれ考えて頑張ってきたのに何で決めれないかな! 私は多少壊れても修復できるんだよ。でもはやてちゃんはここでの結果で未来が天と地ほど変わるかもしれない。私を犠牲にしてでも勝ちに行くって気合見せなよ。マスター、男の子でしょ!〕
言っていることは正しい気もするのだが……性別は関係ないと思う。俺が女だったとしても、きっとこの状況なら同じように迷っていたはずだ。
そんなことを考えられるくらい、俺の頭の中はすっきりしていた。
相棒にここまで言われたのに、このまま寝ているわけにもいかない。この強い思いが痛みを和らげているのか、不思議とスムーズに起き上がることができた。目の前に降り立ったシグナムの顔にも驚愕の色が現れている。
〔マスターが考えている以上に、私はマスターのことを守りたい。思いを貫くための力になりたいって思ってるんだからね〕
〔そうか……なら遠慮しないからな〕
〔当然。というか、ここで遠慮したら絶交だね〕
絶交か……そんなことされたらどうなるかな。なんて考えてる場合じゃないか。
さっきまで負けると諦めていたのが嘘のように心に余裕がある。戦闘が始まる前よりも余裕が生まれているように感じるのは、シグナムを止めることにそれだけ集中できているということだろう。
「正直終わりだと思っていたのだがな……」
「そう簡単には……折れないさ」
「……そうだな」
ポツリと返事を返したシグナムは、何かを言いそうになったものの口を閉じた。前髪でよく見えないが、俺から視線を外しているように思える。彼女は何か考えているのかもしれない。
少しの間の後、シグナムの視線が再びこちらへと向いた。彼女の瞳には全く鋭さがなくなっている。それに加えて、右手に持たれた剣の先が地面に向いていることから彼女に
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