As 08 「届かぬ想い、折れる刃」
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い。けど……俺じゃシグナムには勝てない〕
〔勝てない? ……そういうのは本気で戦ってから言いなよ〕
起動している状態のためファラの表情を見ることはできないが、とても冷たい声だった。これまでに一度も聞いたことがない声に俺は戸惑いを隠せない。
〔な、何を言ってるんだ? 俺は……本気で戦ってただろ?〕
〔あれがマスターの本気? 笑わせないでよ〕
ファラはいったい何を言っているのだろう。
シグナムを攻撃するのに迷いがなかったわけではないが、彼女に蒐集をやめてもらうために充分な威力を持った攻撃を行っていたはずだ。なのにどうして本気で戦っていないと言われる……
〔マスターは今回の戦闘で……ううん、これまでに一度だって本気で私を使ったことなんてない〕
本気で使ったことがない……データを取ることが主だったが、俺はいつだって本気でファラを使ってきた。それはこれまでに取ったデータを見れば一目瞭然のはずだ。彼女だって分かっているはず。
〔どういう意味だ?〕
〔分からないの?〕
〔分からないから聞いてるんだ。少なくとも俺は本気でお前と向き合ってきたつもりだ〕
だから今のように戦闘では以心伝心と言えるくらい通じ合えているんじゃないのか。それとも、こんな風に思っていたのは俺だけなのか……。
〔今の言葉が……本気じゃないってことを証明してるようなものだよ〕
〔え……〕
〔私は使ってないって言ったんだよ。でもマスターは向き合ってるって返してきた……それってさ、私のことをデバイスじゃなくて人間として扱ってるってことだよね?〕
ファラは人間らしさを追求する研究の中で生まれたデバイスだ。容姿も小さいとはいえ人間。誰だってデバイスとしてよりも人間として扱うはずだ。あのシュテルでも、そうしてしまっていると言っていたのだから。
だが俺はすぐに返事をすることはできなかった。ファラの声が、先ほどと打って変わって寂しげだったからだ。
〔別に人間として扱ってくれるのが嫌ってわけじゃないし、マスターが私のことを大切にしてくれてるのはよく分かってる。でも……私はどんなに人間らしくなってもデバイスなの。デバイスなんだよ……こういうときくらい、デバイスとして使ってよ〕
悲しみや寂しさが感じ取れるファラの言葉を聞いて理解した。
ファラは人型のフレームをしているだけだ。着替えをしたりすることはできても、一緒に食事を取ったりすることはできない。どんなに望んでも、彼女にはできない行動があるのだ。
人間らしくなることに俺はプラスの感情ばかり抱いていたが、ファラはそうではなかったのだ。人間らしくなることによって、自分は人間ではなくデバイスなのだと思い知らされる。
どんなに願っても叶うことがない切なさは、両親を失ったことで
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