As 08 「届かぬ想い、折れる刃」
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ではない。
「――っ!?」
突如シグナムの身体に制止が掛かる。彼女の右足には黒い輪。俺の設置していたバインドにかかったのだ。
しかし、高速戦闘をしながら設置したお粗末なものだ。シグナムレベルの相手を止めていられるのは、ほんのわずかな時間だろう。
――だが、この少しの時間があれば本来の威力で砲撃できる。
砲撃と魔力弾の一斉射撃。いくら平均レベルの威力であっても、直撃すればシグナムとはいえただではすまないはずだ。動きを鈍らせることができれば、こちらの勝率が上がる。
「予想していたよりも……いや、それだけ私を止めるという想いが強いのか。……だが」
シグナムは先ほどまでとは別人と思えるほど、覇気のある目を浮かべた。再び剣を鞘に納め、カートリッジをリロードする。
鞭状連結刃で応戦するつもりか……だが俺の砲撃でも、それくらい弾き飛ばす威力はある。
撃ち出した漆黒の魔力は凄まじい勢いでシグナムへと向かっていく。だが彼女の顔に焦りの色はない。むしろ勝つのはこちらだと言いたげな自信があるように見える。
「飛竜……一閃ッ!」
予想していたとおり連結刃が放たれたようだ。砲撃と衝突し、周囲に衝撃と音が拡散していく。
物理攻撃なのに大した威力だ。でも砲撃の威力を完全に殺すことはできない――
「なっ……!?」
――一瞬何が起こったのか理解できなかった。
闇色の光を吹き飛ばして現れたのは、先ほどとは違って炎を纏った刃。一直線上に撃ちだしていることもあってか、先ほどよりも速い。それに炎を纏っているからか圧力も増している。これを表現するのなら大蛇ではなく竜だ。
連結刃が迫ってきていると認識した俺は、とっさの判断でファラを砲撃形態から通常形態に戻した。左右に持った剣と鞘を前に出す。刃が到達するのと同時に、凄まじい衝撃に襲われた。砲撃を撃ち破る威力を誇るだけに、その一撃の威力は強大。気が付いたときには、俺はすでに吹き飛ばされていた。
「うぐ……!」
制止をかけることができなかった俺の身体は地面に衝突した。打ち付けられた衝撃で呼吸が苦しくなる。一度の衝突で勢いは衰えることはなく、何度も地面を跳ねた。止まったときには全身がひどく痛み、息苦しさに襲われていた。
……勝てない。
近接戦闘の技術はシグナムのほうが数段上。彼女の中に迷いがある状態なら多少やりあうことができるが、勝ち目はないに等しいだろう。
魔法の術式で有利な中距離戦も、たった今打ち負かされてしまった。遠距離での戦闘に持っていけるスピードも、遠距離から仕留められるだけの高威力の魔法も俺にはない。完全に詰んでしまっている。そんな思いを読み取ったのか、ファラが俺に話しかけてきた。
〔マスター……諦めるの?〕
〔……諦めたくはな
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