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パンデミック
第五十二話「過去編・消失」
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作し始めた。
その間に、ブランクはフィリップを壁に寄りかからせて休憩させた。

「分かるか? もう少しで外に出られる。もう少しだ!」

フィリップはブランクの言葉に弱々しく頷く。


「装甲壁のゲートは内側からしか完全封鎖できない。本来は感染者の侵入を防ぐためのシステムだが………
まさか感染者を閉じ込めるために使うとはな。いいか、このゲートは10秒で閉じる。私が合図したら
フィリップを担いで早急に出ろ。いいな?」

「了解」

ブランクはフィリップの肩を担ぎ、ゲートの前まで移動する。

「…………ゲートを開けるぞ」

ヴェールマンが制御パネルのスイッチを押した。
突然変異種の突進でひしゃげ、所々に亀裂があるゲートが、ゆっくりと開いた。

「今だ、行け!」

ヴェールマンの合図で、ブランクはフィリップの肩を担ぎながらゲートを出ようとした。
次の瞬間………


フィリップがブランクの腕を振りほどいた。

突然の出来事にブランクは一瞬呆然となった。
ハッと我に返ったが、もう遅かった。

ブランクはフィリップに強い力でゲートの外に突き飛ばされた。
それに気づいたヴェールマンも、胸ぐらを掴まれ、思い切りゲートの外に投げられた。



「………………………フィリップ?」

2人をゲートの外に放り出したフィリップは、そのまま制御パネルの方にフラフラと歩き出した。


…………………よせ。


フィリップは制御パネルのスイッチに手をかけ……




……………………やめろ。






再びスイッチを押した。




「やめろぉぉ―――!!!」



ブランクが急いで起き上がり、ゲートに向かって駆け出す。


「来るなっ!!!」

フィリップが叫ぶ。
ブランクはフィリップの叫びで立ち止まった。


フィリップの血に濡れた口元は、微かに笑っていた。
それは本当に微かで、しかし穏やかなものだった。



ゲートが閉まる直前、フィリップの口元が動くのが見えた。
声を聞き取ることは出来なかった。

しかし、何と言ったのかは理解できた。


弱々しく、ただ一言……………








「ごめんな」と………………
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