第五十二話「過去編・消失」
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―――【日本支部地上・装甲壁内】
ようやく地上に出たブランクとヴェールマンは、装甲壁のゲート付近にいた兵士達に急いで駆け寄る。
「おーい! 無事か!?」
ブランクが兵士達に声をかける。
その声に気づいた兵士達が一斉に振り向いた。
「ブランクさん! 司令! ご無事でしたか!?」
「なんとかな、それよりフィリップは!?」
ブランクは兵士の一人の肩を掴み、フィリップの行方を確認する。
すると、肩を掴まれた兵士が、ある一点を指差した。
ブランクとヴェールマンが兵士の指差す方へ視線を向けると………
そこにはレックスとタガートと…………フィリップが感染者の群れと交戦していた。
感染者と戦うフィリップの姿は、完全ではないが感染者に近い姿に変わっていた。
眼は左だけが赤黒く変色し、鼻や口からは血が垂れていた。
右手にはククリナイフを持ち、それで戦っているが、時折左手で感染者を殴りつけて戦う。
感染者を殴った左手は、既に変異して赤黒い突然変異種のような歪な形に変わっていた。
「フィリップ……一体……あれはどうなって」
ブランクは言葉を失った。
ヴェールマンから発症したと聞き、どんな姿になってしまったのか予想も出来なかった。
そこで感染者と戦っていたフィリップの姿は、人間らしさを留めていたが、"人間"のフィリップはもう
いなかった。戦っているのは"完全な人間"ではなかった。
"人間と感染者の中間"のフィリップが、ブランクの目の前で戦っていた。
「生きていた………フィリップは生きていた……でも、これじゃ……!」
感染した以上、いずれ殺さなければならない。
感染者を退け、撤退できたとしても、有効なワクチンや治療法が無い。
当然、爆撃機に乗せることはできない。
ブランクは絶望に打ちのめされた。
もうどうすることもできない。
ここで生き残っても、フィリップはもう一緒に帰ることは無い。
じゃあ俺は…………なんのために戦うのか……………
「戦えぇぇぇ!! ブランク!!」
レックスの怒号が飛んできた。
「テメェ何絶望してんだ!! フィリップは親友なんだろ!?」
……………そうだ。
タガートが、レックスに続いて口を開いた。
「ブランク、絶望する気持ちは分かる。しかし、それで全てを放棄するにはまだ早い」
………………そうだ!
何を迷う必要がある?
どんな姿になっても、フィリップは俺の親友だ。
親友が戦っているのに、何故俺はただ見ている? 馬鹿か!?
気づけば、ブランクは走り出していた。
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