暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外7話『ドラム島で試し撃ち』
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ハントの薄皮を切り裂き、その頬に血をなじませたが、それだけ。空振りに終わってしまったクロマーリモの拳とは対照的にハントの拳は見事にクロマーリモを捉えていた。
 いわゆるカウンター。
 自分の力だけでなく相手の力も利用して一撃を加える技術。

「ぬお!」

 ワポルと同様に吹き飛ばされていくクロマーリモが木の幹にぶつかってそのままずり落ちる。ダメージは――

「……おのれっ!」

 ――あまりない様子。

 あわよくば、そう考えていたハントだが残念ながらやはりそううまくはいかない。僅かにげんなりとした表情になり、先ほど蹴り飛ばしたワポルを見やれば「大丈夫ですか、ワポル様」というチェスの言葉に「まはは、まるで女子供よ!」とクロマーリモ同様、ほぼ効いていない様子が彼の目に入った。

「……はぁ……はぁ……ふぅ」

 ――……くそ。

 少し動いただけにも関わらずまた息が切れてきた。力が入らない。力が入らないため魚人空手陸式も使えない。体も重くて全く持って本来のように動けない。今はまだ遅い動きでも見聞色の覇気でなんとかなってはいるが、残念ながらその覇気を使う体力も、もう空に近い。
 この状況で覇気を使えなくなったら、おそらく負ける。

「なんだ、もうへばっておるのか」

 まっはっは、と笑うワポルが笑い、同じくにやけた笑みを浮かべたクロマーリモとチェスがそれぞれの得物を構えてハントに対峙する。

 ――……こうなったら。

 ハントは覚悟を決めた。なぜならもう今のハントに出来ることは一つだけ。

「さぁ、今度こそやってしまえい!」
「はっ!」
「かかってこい」
「言われなくとも!」

 ハントの言葉に対してチェスが矢で狙いを定め、クロマーリモがとびかかる。またワポルが雪景色に隠れようとするサマを見ながら、ハントは覚悟を決める。諦めたように一度頷き、彼らを睨み付けてそして言う。

「ばーかばーか!」

 まるで子供みたいな言葉を吐き捨てて、そのまま背を向けて走り出した。

「誰がバカか! 王を愚弄した人惨殺!」

 悪口を言われて反射的に言い返したワポルだったが、背を向けて自分たちから離れていくハントの行動の意味がわからずにすぐに「む?」と首を傾げた。要するにハントは彼らから逃げ出したわけだが、それがつい先ほどに『かかってこい』と言った人物の行動にとは結びつかず、ワポルたちは呆けてしまう。

「……」

 じわじわと遠ざかる背中の意味が分からずにそれを眺めていたワポルだが、数秒ほどたってやっとハントが逃げ出したという事実に気づいた。

「逃がすな、追え!」
「逃がすかっ!」
「逃げられると思っているのか、バカめ!」

 口々に言い、ハントを追う。

「捕まてみろ
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