暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外7話『ドラム島で試し撃ち』
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ける。

 ――よし。

 雪が溶けて手がぬれたことを確認したハントが雪崩へと対峙するかのようにいつもの魚人空手の構えをとった。

「てめぇこれでナミさんが助からなかったら、死んでからだろうがオロシてやるからな!」

 雪崩の騒音の中でもかすかに聞こえるサンジの声を聞き流し、ハントは一度深呼吸を。

「……すー……はー」

 ――やってやる。どうせ逃げても間に合わない……だったら俺が、やってやる。

 ハントにもこれをどうにかできる自信はない。少なくとも魚人島を出る時に、今からやろうとすることは完成していなかった。だが、雪崩という災害をどうにかするためにはそれはやらなければならない。

 後ろにいるナミを想い、自分を奮い立たせる。もう一度大きく息を吸い、魚人空手の構えからまたゆっくり別の構えへと移行し始める。

 左半身を大きく前にだし、距離を測るかのように左腕をまっすぐに伸ばす。左掌を雪崩へとしっかりと向けて対象を補足。右半身に体重を乗せ、腰だめに構えた右手は、左掌同様に掌として雪崩へと向けられている。
 
 これで準備は整った。
 吸い込んでいた息を、ゆっくりと吐き出し始め――

 ――雪は水で、ここは陸上で……ならあとは俺のすべてをぶつけるだけだ。

 雪崩が、3人を呑みこもうとその大きな咢を開き――

 ――吐き出していた息を鋭く止め、体重の乗っていた右足を大きく踏み出し、その足で雪山の地面を踏み抜くと同時に、腰だめに構えていた右掌を黒色に変色させて迫りくる雪崩へと開放した。

 雪崩とハントの掌が接触。
 そしてその瞬間。

 ――雪崩が音もなく消失。無へと帰った。

「……うぉ」
「……な」

 雪崩が、まるでなにもなかったかのように消えるというその光景に、ルフィとサンジが彼ら自身でも気づかないほどに小さな声を漏らした。

 目の前を覆っていた雪の災害が消え、視界が無から有へと広がる。
 雪山に響いていた暴力的な音が消え、騒音の世界が静寂へと変わる。
 完全なる平穏が戻った彼らに、霧雨のように何かが降り注いでいた。もちろんここは雪山で、空からは相変わらずのように雪が降り続けている以上、本物の霧雨などでは決してない。

「なんだ雪降ってんのに雨も降んのか?」と楽しそうに笑うルフィとは違い、サンジが驚きに目をみはる。
「こいつは……雪崩か?」

 サンジの半信半疑の呟きだが、それが正解。土砂も、雪も、雪崩に押しつぶされていた木々も、雪崩が含んでいたすべての要素がまるで霧雨のごとく小さく分解され降り注いでいる。

「……魚人空手陸式奥義『楓頼棒(ふうらいぼう)』」

 技を発動して数秒ほど硬直していたハントが最後を締めるかのように言葉を落とし、音を失った
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