第一話
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命を救った。
ふと見た背後を通ったのは、光。それも濃密な。笑えない。あれをくらったら、確実に死ぬ。だけど一誠は――
「はは、ははは」
「笑みを浮かべるとは、下級風情が」
おそらく、土地勘などはこちらに分がある。だからこそ、次で右に曲がる。うしろから追ってくるのが分かる。直ぐに左へ。左、右、左。
思い浮かんだのは、あの赤い髪だった。だが、今は関係ない。とは思っても、目指す先には大いに関係があったが。
目の前に現れたのは、一誠の通う学校。駒王学園だった。迷いは無い。もうあたりは暗くなっており完全下校時間も過ぎている。一誠はスピードを上げ、大きく跳躍した。それでも人間の限界を超えるかそうでないかていど。だが、閉ざされた校門を飛び越えるのには十分だった。門に足をつき、踏み越える。
空中でたたらを踏むという矛盾した行為をしながらも、体勢を必死に整える。肩から落ち、地面を一回転してその勢いのまま走り出す。そして二度目の計算違い――目の前に白い髪の小柄な制服を見つけてしまった。
「くっそぅ、がぁッ!!」
その生徒を確認してからの、ほんの数瞬の判断。足を踏ん張り、方向転換。最後に見えたのは、その少女の驚愕した顔だった。
「くらいやがれぇッ!!」
追ってきた男に、全力の右ストレート!
まさか反撃にでるとは思っていなかったのか、男は身を硬直させる。それが最高の隙だった。
男の顔面に、拳が吸い込まれる。そして続いてのボディブロー。回し蹴りはついでだった。そのまま倒れこむ男に目もくれずに、背を向ける。
「逃げるぞっ!」
そしてその生徒の手をとり、走り出す。
「にゃッ!?」
かわいらしい声が聞こえたが、気にする暇は無い。目指すは旧校舎。分かる。直感だった。いや、最初から感じていた。
「どこに、向かってるんですかッ?」
少女の声。意外にも落ち着いていた。すこし呆気にとられたが、スピードは緩めない。
「旧校舎だよッ!」
息を呑む少女。当たり前か。まさかそんなところに向かうとは、普通思うまい。
「なんで、ですかッ?」
「たぶん。グレモリーがいるだろうッ? あいつはなんか知ってる。絶対だッ!」
「なんで、分かるんですかッ!?」
「なんとなくだよッ!」
駆け込む。もう後ろに殺気は感じられない。次、再会したときが恐ろしいが、それは今気にするべきではない。だが、階段を駆け、二階に上がる。そこでやっと、息をつく。幾ばくかして、立ち上がる。先に今の状況をどうにかしなくてはいけない、
「確か、オカルト研究部だったか? うろ覚えなんだがなぁ」
手探り次第に探すか、と一誠が意気込んだところで、少女が袖を引いた。
「こっちです」
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