第一話
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兵藤一誠。
そこそこ良い顔。頭脳は普通。大したとりえの無い男子高校生。
――そして、現赤龍帝である。
今日はからだがだるい。太陽が憎らしくて、仕方がない。何故かいつもよりも眩しく感じるのだ。それに昨日の夜はあまり寝ることが出来なかった。
明らかなまでに異常だった。どうしたというのか、全く分からない。
授業にも身が入らなかった。体育なんて、途中で吐きそうになるくらいだ。昼休みには、目が合った先輩を思い出すたびに、胸が苦しくなる。名前は、確かグレモリーだったか? 全く持って悪魔のような名前だ。魔性の女だからかもしれない。
夕陽が気持ち良い。先までの疲れが信じられないほどに消え去っている。だからこそ、その男にあったのは、神の存在を疑うほどのことであった。
「ふん。はぐれ悪魔か? それともただの下級悪魔か。まあ、滅することには変わりない」
突然現れた男の衣装の奇妙さに、一誠は目を疑う。
白いスーツ姿に、黒い羽。そして、明らかすぎるほどの殺気だった。このとき、咄嗟に走り出した自分を褒めたいところだった。だが、そんなことを言っている暇は無い。ただただ全力で走る。
曲がり角を右へ左へ。後ろを振り向いてはいけない。それで足を緩めれば殺される。まだ殺意は後ろにあるのだから。
そうして数分。たどり着いたのは、公園の噴水の前だった。何故か見覚えがある。確かに、ここには何度も訪れた事があるが、そういうことではない。
気味の悪い。息を整える。まだ時間には余裕があるだろう――結果的に言えば、それは計算違いだったけれども。
「哀れな。逃がすとでも思ったか? これだから下級は」
ばっと振り返る。そこには先ほどの白スーツの男。宙に浮いていた。
目が合う。先にそらしたのは相手だった。
「主は誰だ?」
「…………主?」
主とはなんだ。そんなものは存在しない。宗教のことか? イエス様でございます天使さま、とでも言えば助かるのだろうか。ならば笑いものだ。そもそも、この男の容姿からして堕天使のほうが似合うだろう。だったら、なおさら主とはなんだ。
「主もわからないとは。なんという……」
哀れみの目が、侮蔑の目に変わる。それを察した一誠は、走り出した。まだダメだ、殺される。死ぬわけにはいかないのだ。約束がある。
「無駄なことをッ」
声が聞こえるが、無視。かまっている暇は無い。余裕も無い。
「はぁ、はぁ、はぁ、クッソっ」
リズミカルに息を吐き、走る。まさか、あの時の約束が、こんなところで役に立つとは。
「このッ、下級がぁッ」
男の叫び声。そして、今までにないほどの死の感覚。もう考えもなにもなく、ただ右に曲がった――それが一誠の
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