GGO編
九十六話 力と速さ
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「っとと……さて……」
リョウが降り立った。恐らくは今日最後の戦いの舞台になるであろう場所は、列車の廃車場のような場所だった。周囲には線路が続き、真横には廃棄されて幾年がすぎたのかよく分からない赤茶色の錆だらけ車両を八両編成で繋いだままの列車。
中には長年の風雨でか、あるいは此処で何かしらの争いが以前有ったのか、横倒しになった列車や、外壁の一部が吹き飛んでいる車両もある。
地面は線路上には砕石が無数に有るが、基本的にそれ以外の場所は地面むき出しで、乾燥し切っているせいか、風が吹けば少々の土煙すら舞い上がっている。
ステージ
“列車墓場”
「クールダウンの時間もうちょいあっても良いと思うぜ。運営〜」
少し立て続けに対人戦になったので、リョウは小さくそんな事をぼやきつつ、近場の列車に背を付ける。そのままそのまま聞き耳を発動……
「なっ!?」
距離、左150m。ギザギザに進んで140、130、120……
『早すぎだろ!?』
凄まじいスピードでその反応は此方に接近していた。
その速さだけで、リョウは相手……風巻杏奈こと闇風の(いや、逆か?)ビルドを悟る。否、悟らざるをえない。
『極AGI型、ね……!』
Agility(敏捷値)を極限まで高めたタイプのビルドで、凄まじい足の速さと回避能力、命中精度(着弾予測円の縮小が早くなる)を持つ。言わばリョウとは間逆に近いビルドだ。
GGOサービス開始当初は、他を圧倒したらしい。今でもそうかは知らないが、いずれにせよ……
『こんだけ高められてると……』
即座に判断を下し、リョウは装備を切り替えようとウィンドウを操作する。
『間に合えよ……』
操作を行う間にも、音はぐんぐん接近して来る。相変わらず進み方はギザギザだが……考えたくは無いが、もしかしたら此方の位置がバレている……?
だがその接近する音が、突如横に逸れた為、リョウはほぅ。と息をついた。
『今のウチ……!』
よりいっそう速度を上げて、リョウは操作を行う。そして……
────
闇風は、凄まじいスピードで廃棄された列車の間を縫うように走りつつ、今回の相手の事を考えていた。
リョウコウ。
一年以上前まで、自分が捕らわれていた世界に置いて、その名を持つプレイヤーは有る一つの異名で下層から上層まで広く知れ渡っていた。
“ジン”と言ったその名はあの世界に置いて、もう一つの名と共に“最強”として知れていた名だ。
まあ知れていたと言っても、実際中層に降りてくる事がしょっちゅうで有ったわけではないため、もっぱらその異名の持ち主の人物像は、殆どのプレイヤーは噂によって知るところが多かったと言って良い。
例えば……目につくもの全てを粉砕する
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