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SS:鬼、縁、そして翼
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には思えませんでした。
 どちらを信用すればいいのか、少年はとても悩みました。剣の使い方を父親に教わる時も、女の人に知識を授かる時も、内心でずっと悩んでいました。悩む少年を見かねた女の人は、こっそり少年にあることを教えました。

「翼を持った一族には、その一族にしか使えない武器を持っていたそうよ。強い風の加護をうけた武器で、他の種族には扱うことが出来ないんだって。実は一度だけそれを見たことがあって……銀色の不思議な剣だったわ。もしもあなたがそれを扱えるのならば、父親は嘘つきね」

 少年はそれを聞いて、直感的にその剣が父親の部屋に飾ってある銀色の剣ではないかと思いました。いてもたってもいられなくなった少年は、父親の部屋に走りました。その心に、信じていた父親に裏切られる不安と恐怖を抱えながら。

 何やらアジトの入り口が騒がしく、父親はそちらに向かったようでした。勝手に入ると怒られるだけに、今しかないと思った少年は部屋に飛び込みました。
 剣は相も変わらず眩い光沢を放っています。少年は内心の不安と真実を知ることへの恐怖から手を震えさせながら、恐る恐る剣を携え、鞘から刃を抜きます。それは片刃のカタナという剣でした。

 その瞬間、少年の身体を今まで感じたことのないほどに心地よい風が包みました。
 それは今までに感じたことのない、包まれるような優しい風でした。そして――気が付けば、少年の背中には本人の意思を無視して飛びだした翼が現れていました。
 ですがその翼は今までのそれとは違います。茶色っぽくて荒い羽根は全て抜け落ち、その中から吸い込まれるほどに深い漆黒の双翼が現れたのです。少年は、根拠もないのに自分が空を自由に飛べるようになったのだと確信しました。



 少年は父親の事も忘れてその胸の高揚に笑みを漏らし、外へ走りました。
 外には人を襲う魔物と、その魔物を操る「魔物の将軍」が待ち構えていました。ですが未だに剣が未熟なはずの少年は、その敵に恐怖を感じません。既に日が沈んだ夜の月明かりに、黒翼の影が重なります。
 そして――恐ろしい速さで飛び回った少年は次々に手に持った銀のカタナで魔物を切り裂きました。夜の暗闇はよく目が見えませんでしたが、纏う風がすべての動きを教えてくれました。少年はまるで遊びまわるように魔物を殺し、とうとう「魔物の将軍」の首さえも斬り落としてしまいました。

 少年の頭は、それまでの悩みが嘘のようにすっきりと冴えわたっていました。だから少年は、よくやったと笑って近づく角の生えた父親に歩み寄り――その首をも無言で切り落としました。

 父親だと思っていたそれは、ただ自分を騙していただけの最悪の男だったからです。
 本当の家族を皆殺しにし、いいように人をこき下ろし、たまに思い出したように飴を与え、今
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