SS:鬼、縁、そして翼
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人のお世話をするのはいつも少年の役割です。汚れた体をきれいにふき取り、髪を結い、服を洗い、食事を与える。どうして大人がやらないのだろうと不思議に思っていましたが、こういうことは子供にやらせた方が女の人のためになると言われてそういうものかと納得していました。
今まで世話をした女の人たちは、確かにどれほど男達に乱暴されても少年を拒む人は少数でした。今回運び込まれた女性も、少年を拒むことはありませんでした。それどころか女の人は、少年の知らないいろんなことを少しずつ教えてくれたのです。
少年はそんな女の人の事をとても気に入っていましたが、洞窟の中から出してあげる事は出来ませんでした。少年の父親が、その女の人をとても気に入っていたからです。今までも何度か、閉じ込められた女の人を可哀想に思って逃がそうとしたことがありましたが、父親にひどく叱られ、折檻と称して背中を鞭打ちされました。それが怖くて、少年は父親に逆らえないでいました。
ある日、少年は女の人に、どうして自分と父親がこんなにも似ていないのかという疑問をぶつけてみました。女の人はとても物知りだったので、ひょっとしたら大人たちの知らない事を知っているかもしれないと思ったのです。女の人はその言葉に驚き、そして怒り、最後は少年を憐れむような顔でこう言ったのです。
「この洞窟の近くに、翼を持った一族が住んでいたわ。でも10年ほど前に、盗賊に襲われてみんな死んでしまったの。襲ったのは、二本の角が生えた男の率いる盗賊だったと聞いているわ」
少年は驚きました。この洞窟の大人は翼も角も生えていないヒトが多く、自分や父親のような存在は特別だと思っていたのです。自分以外にも翼をもったヒトが沢山いたという事に驚きを隠せません。しかし、同時にそんな人たちを父親が殺してしまったのではという疑問を抱きました。
「あなたは、きっとその一族の生き残りなのね。盗賊に拾われて、利用されているんだわ。酷い嘘つき……貴方が本当にあの男の子供ならば、頭には必ず角が生えている筈よ。あなたは騙されているんだわ」
少年は強い衝撃を受けました。自分の父親は、本当の父親ではないということなのだと直ぐに理解しました。親子という関係を理解していなかったから今まで疑問にも思わなかったのです。
それだけに、少年は信じていたものがあやふやになって急激に心細くなり、女の人こそ嘘をついているのではないかと疑いました。大人はみんな父親に従っているから、父親の方が正しいかもしれないと思ったのです。
父親に真偽を問いただすと、女の人は嘘つきだから信用するなと怒られました。
父親は直ぐに暴力を振るうけれど、言う事を聞いていれば褒めてくれるしご飯を与えてくれました。でも、女の人が言っていることがまったくの狂言だとは少年
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