第三話
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薄手のシャツ一枚のところから見るに鍛錬でもしていたのだろう。
二人が見ている先で青年は無手で型を行っていく。錬金鋼は剣帯に付けたままだ。
淀みないそれは長い事培われた技術の賜物だろう。気づけば足が交差し動作の質が変わる。動作の節を感じさせず体捌きも高いレベルだ。
何故青年の存在に気づくのが遅れたのかレイフォンは目を凝らして気づく。青年は剄を殆ど使っていない。活剄も最低限で寧ろ殺剄を行っているようだった。
その姿に前回会った際に感じた違和感をレイフォンは再度思い出す。何か引っかかるものがある。
「どうします。このまま見てるのも何ですし逃げますか?」
「ニーナさんの所の人なら見つかっても平気は平気ですが……」
青年は型を終えたのか動きを止める。少しして逆立ちになり腕立て伏せを始める。
「何で此処でやってるんでしょうね」
最もな疑問だった。
外縁部に近いからか都市が動く度に都市内部よりも揺れを顕著に感じる。体を支えるようにクラリーベルの手がレイフォンの肩を掴む。
クラリーベルはレイフォンの後ろにいるのだ、覗き込もうとすれば体を前に出すしかない。自然とクラリーベルの体がレイフォンの背中に一部押し付けられる様な形になる。
(……)
背中に感じる熱に少し前の会話を思い出しレイフォンは無言になった。背中に当たる感触から逃れようと僅かに体を前に出す。
だが支えにしている体が前に出ればクラリーベルの体も前に出るのは当然のこと。寧ろ体が前のめりになる分余計にレイフォンの背中に密着する面積が増える。吐息が僅かに当たりさえする。運動後で体温も高い。その為レイフォンはまた僅かに体を前に出す。
無心での行い。それを三度繰り返し足を動かした時、レイフォンは置かれていた廃材を蹴り飛ばした。小さな衝撃ではあったが廃材の一部が地面に倒れ音が鳴る。
『……』
気まずい沈黙が二人の間に流れる。すぐさま顔は引っ込めたが確実に気づかれただろう。
何やってるんだというクラリーベルの冷たい視線がレイフォンを貫く。
少し柔らかかったし暖かかったんだからしょうがないじゃないか。
レイフォンは心の中だけで言い訳をする。
「誰だそこにいるの」
青年の声にどうするべきかと視線を交わす。
建物の影から再度覗き込むと青年は明らかに二人がいる方を向いていた。
「反応はなしか……誰かいると思ったんだが。ふむ」
そのまま見ていると青年は殺剄を解き、剄を練りながらこちらに歩いてくる。
「まあ適当にぶち込めば分かるか。隠れてる方が悪い」
酷く荒っぽい方法だ。
逃げてもいいがこのままでは周囲一体が衝剄に荒らされる。
二人は殺剄を解いて影から出て行く。
「あの――」
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