第一話 赤い転校生その十六
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「じゃあプラモを作っても。作るかどうかわからないけれど」
「赤いものですね」
「プラモは作らないけれど赤のもの優先だよ」
周りに置くものもだというのだ。
「とにかくあたしは赤なんだよ」
「それでもいつも赤尽くしなのね」
「そういうことですね」
「そうさ、まあとにかくこれからも宜しくな」
「ええ、これからもね」
「宜しくお願いします」
三人でにこりと笑って話す、そうしてだった。
薊は部屋の中でも打ち解けて仲良く暮らすことが出来た、その学園生活は順風満帆になりそうな気配だった、だが。
不意にだ、転校した次の日にだった。一年B組にある男が来た。その彼の訪問を受けてだった。
クラスの面々が目を瞠ってだ、こう話すのだった。
「おい、あの人かよ」
「あの人が来られるのかよ」
「何かあったのか、うちのクラス」
「おかしなことでも」
こうひそひそと話す、見れば。
その男は一八五程の長身で黒髪の右の方を上げ左の方をおろしている。銀縁のフレームの薄い眼鏡をかけ口元は引き締まっている、
黒い詰襟の制服と同じ色のズボンの身なりの上に白い、科学者が着る白衣を着ている。その彼を見てだった。
彼等はだ、驚きを隠せない顔で話すのだった。
「天極智和先輩かあ」
「三年生の中でも異質な人だよな」
「お祖父さん凄く有名な学者さんよね」
「生物学とか医学の権威だったのよね」
「それで色々凄いことされてて」
「その特許で莫大な収入もあって」
「ァの先輩豪邸暮らしらしいわね」
彼のことが話されていく。
「お金持ちで特進科でも首席らしいわね」
「滅茶苦茶頭いいんだって?」
「特に理系が抜群で」
「もう八条大学の医学部か理工学部に推薦が決まってるとか」
「将来を渇望された天才ってことか」
「そんな人がうちのクラスに来られるって」
それがわからないというのだ、だが。
その男天極智和は低く端整な、かつ落ち着いた声でクラスの男子生徒の一人に問うたのだった。
「このクラスに横須賀からの転校生が来たらしいね」
「あっ、薊ちゃんのことですか」
「それがその転校生の名前だね」
「はい、天枢薊っていいます」
男子生徒は智和に薊の名前も話した。
「明るくてえらくワイルドな娘ですけれど」
「成程ね、それでその天枢さんは今は」
「部活の朝練だと思います」
それに出ているとだ、男子生徒はクラスの中を見回してからまだ薊がいないことを確認してから答えた。
「まだ」
「そうなんだね」
「よかったら部活の方に行かれますか?拳法部かモトクロス部にいますよ」
「どちらかだね」
「二つの部を掛け持ちするそうで」
「そのこともわかったよ」
まるでコンピューターのメモリーに記憶させた後の様に合理的かつ無機質な声で
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