オリジナル/未来パラレル編
第24分節 紘汰と咲 (2)
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ザックはこの後、晶と合流して別件で出かけることになっていたので、紘汰と咲の二人だけでガレージへ帰った。
「お茶淹れよっか。コウタも飲むよね。お茶? コーヒー?」
「お茶で。じゃあ報告書作っちまうな」
「おっけー」
パタパタとカウンターの内側に入り、ヤカンをカセットコンロにかける咲。彼氏の欲目を引いても甲斐甲斐しい。これが自分の彼女なのだと思うとじーんと来る紘汰であった。
「さて、っと」
紘汰はPCを立ち上げ、デスクトップの報告書の様式のアイコンをクリックした。
(フリーター時代はもっぱら力仕事やら配達だったけど、起業してから姉ちゃんに鍛えられたからなあ、俺もザックも。今じゃ大体のソフトは使いこなせるや)
報告書作成ははっきり言って面倒くさい。しかしたまに警察の要請で失踪者捜索の資料として提出を求められることもあるので、適当に済ませられない。そういう点でまめまめしさを発揮するのが葛葉紘汰という男である。
「はい。お茶どーぞ」
「サンキュー」
咲は笑って、トレイをカウンターに戻し、彼女のカップを持って自席に座った。
コーヒーを飲みながらスマートホンをいじる咲の動作を紘汰は目で追った。
「わっ」
「どした?」
「トモ……昔の仲間からメール来た」
咲はご機嫌な様子で返信を打ち始めた。紘汰としては、咲が明るい表情を浮かべるだけで心がほんわかする。――昔、鬱蒼とした顔ばかりだった咲を知っているから。
だが、ふいに咲は、顔から表情を削ぎ落とした。
紘汰は訝しんで呼びかけたが、咲は無反応。いよいよ心配になり、紘汰はデスクを立って咲の前まで回り込んだ。
咲の横に立って薄い肩を掴む。途端、咲が弾かれたように立ち上がり、紘汰に抱きついた。
「わ、ちょ、さ、咲っ?」
幸か不幸か、ガレージには紘汰と咲しかいない。紘汰は、自分と比べれば小さすぎる体をそっと抱き締め返した。
もぞ、と動いた咲がより強く紘汰にしがみつく。密着すると、男にはないアレやコレやが生々しく感じ取れる。
咲、と窘めても、咲はより強く紘汰にしがみついてくる。ふりほどけない。見下ろすと視線ばばっちり合った。――瞳の揺れは、キスを交わす前のそれ。
(ザックと姉ちゃん、まだ帰る時間じゃないし……いいよな?)
紘汰は咲に唇を落とす。おでこに、瞼に、鼻頭に、頬に。触れ合ったところから痺れるような感触は、何度キスしても慣れない。
最後は唇に。咲は抵抗なく紘汰のキスを受け入れる――はずだった。
「〜〜っやだ!」
ドンと突き飛ばされて紘汰はたたらを踏んだ。まじまじと咲を見返す。咲の目には水の膜が張っていた。
「っ…ごめんね…!」
咲は紘汰の横を走り抜け
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