詠われる心は彼と共に
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うというような、黒麒麟が鳳凰の羽を手に入れたような不思議なモノであった。
†
詠からの伝令を受けて、気付かない内に俺の顔は笑みに変わっていたらしい。胸の内にこみ上げるのは確かに歓喜であった。漸く本気で叩き潰せる事が嬉しくて仕方ない。
振り向くとずっと最後方に控えさせていた旗を掲げていない徐晃隊が近づいてくるのが見えた。目を輝かせる様子からはあいつらもどれほど我慢していたかが伝わってくる。
あいつらも俺と同じ気持ちだったんだろう。自分達ならばもっと戦える、もっと敵を追い詰められる、もっと皆を救えるのだと。
――大丈夫だ。もう我慢しなくていい。
心の内で呟いて、彼らに笑みを向けると俺の気持ちを読み取ったかのように不敵に笑い返してきた。
詠は少し見誤っている。きっと俺に無茶をさせると考えているだろう。でも違う、これは無茶じゃない。俺達徐晃隊にとっては普通の事であり、お前が言った以上の事が出来てしまうのだから。戦場は盤上の遊戯とは違う事を良く知っているだろうから、俺達の動きにも合わせて貰うぞ、詠。
「さあ、待たせたなお前ら。敵は孫呉の精兵、と言っても……俺達には敵わない。だってそうだろ? ここからは俺達クズの戦場で、血みどろの殺し合いなんだから。クク、いつも通りだ。俺に付いて来い。甘ったれた愚かモノに本当の黒麒麟がどういうモノかを教えてやろうか」
静かに揺れる信頼の瞳を俺に向けて『応』と統一された返事をする徐晃隊。彼らから目を切って戦場の真正面に目を向ける。
徐々にではあるが、敵はこちらの狙いを勘違いして左右へと広がり始めた。
左翼最先端に徐の牙門旗が揺れている。その後ろでは俺に体躯が同じくらいで黒服を着た、月光とは違う黒馬に乗った徐晃隊の一人が指揮をしている。そこに向かうは周と甘の旗との事。まんまと引っかかってくれたわけだ。
右翼最先端では膨大な兵が突撃を仕掛けている。今までに無い苛烈な突撃に焦っているのか敵兵は包囲されないようにと俺達より外へと陣を広げ始めていた。こちらも問題なく嵌ってくれたわけだ。
長く、広くなった戦場で、副長の周旗が揺れ動く。右翼の注意を引き付ける為にゆっくりと。敵の軍師には伝令が飛ぶだろう。鳳統がこの戦場にいるのだと。ならばどうする、どう動く。当然、即時対応の為に動かざるを得ない。
深読みした彼らは時間が経つ度に右左翼の戦闘へと意識を引き摺られていく。
そのまま後方で指揮をしながら待つ事幾刻。漸く急ぎの伝令が届き、詠の望んだ状態へと戦場が変化した。俺が望む状態へと戦場が変わってくれた。
確かに通常の兵相手であれば耐えきれる事が予測される敵兵の壁が中央には敷かれているようだ。だがそれは、俺達にとってはなんでも無いモノ。如何に重厚に並べようとも、
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