詠われる心は彼と共に
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隊と張飛隊の主力精兵を残しつつ戦場を大きく動かせます。鈴々ちゃんだけで袁術軍の対応の指揮を取らなくても良くさせられますし」
如何に袁術軍に有能な将がいないといっても突撃思考の強い鈴々を一人で向かわせるのは不安があった。さらには、孫呉との交渉が何時出来るようになるか分からない為、自然と秋斗か雛里は孫呉への対応に残らざるを得ない。
「でも……兵にボクの言う事をどうやって聞かせるのよ? しかも袁家の草が紛れ込んでるかもしれないのよ?」
詠が直ぐに了承しない事は当然。彼女は徐晃隊とは密に関わりがあっても、他の一般兵とは全くない。今回の戦で新規参入の兵を強制的に戦場に慣らすという思惑も相まってのこと。さすがの雛里もそこをどうやって行うかは思いつかないらしく、疑問の目を秋斗に向ける。
「何、簡単な事だ。詠には雛里になって貰う」
茫然。二人は目を真ん丸にして秋斗を見つめた。言葉が足りなかったと思い至ってすぐに秋斗は続きを語る。
「いやな、此処の所雛里は内政業務ばっかりで初戦の後にここに来た兵からは顔を覚えられてないし、服を借りたらいけると思うんだ。号令は副長の馬に乗ってあいつにやらせればいい。同時に草を炙り出すいい機会にもなる。そんなモノが紛れこんでいるなら徐晃隊のバカ共が黙っちゃいない。侍女をしていても何があるかは分からんし、お前たちのこの先の不安も少し解消されるし一石二鳥だ」
そこで雛里は視線を落とし、じーっと詠の身体の一部を見つめた。不思議に思った秋斗は視線の先を辿って見やる――――途中で雛里の見ているモノに気付いてばっとその膨らみを両手で隠した詠に怒鳴られた。
「見てんじゃないわよバカ!」
「秋斗さん、さすがに私の服では……」
自身の慎ましやかな胸を両手で押さえながら、背が少し高いくらいなのに自分とは違う豊満な胸を見せつけられ、がっくりと項垂れて言う雛里の言は正しく、さすがに起伏の無い彼女の服は着れないと誰もが判断するだろう。
そんな雛里を励まそうといつかのように貧乳の素晴らしさを語り始めそうになるも、さすがに場違いな空気を作りすぎるのは良くないとどうにか我慢することに成功した秋斗は、
「あ、ああ、その問題があったか……張遼みたいにサラシを巻いたら――」
提案の途中で、詠からさらに睨みつけられて口を噤んだ。そのまま詠はため息を一つ。既に自分が出る事は彼の頭の中では確定しているのだと理解して。次に、副長と乗る事で自分がただの策の一環でしかないと思い込ませる事が可能になると気づいて。
人の命の大きな動きが関わってくるのだから詠も戦場に立つ事には乗り気であった。彼女自身、心の根っこには一人でも多くを助けたいという想いがあり、以前の戦で一人を助ける為に戦場を逃げ出してしまったという負い
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