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乱世の確率事象改変
詠われる心は彼と共に
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 孫権軍の行軍情報が入って直ぐのこと、秋斗は雛里と詠を集めて秘密の軍議を行っていた。
 鈴々は部隊編成、月は侍女の業務を代わりに行っている為、その場にはいない。

「な……ボクに対孫権の指揮を任せる……ですって?」

 詠は秋斗の放った言葉に耳を疑った。事情を知っている他の者が聞けば、人並みの幸せを探せるようにと彼女達に願っていたはずなのに、今更それを取り上げるというのは何事かと言うだろう。軍師としてもう一度戦場に立ち、人殺しの重責をさらに背負えと言うのは余りに非道ではなかろうかと。
 だが、詠の驚愕は別。敗軍の軍師である自分に全てを預けるほど期待しているというその一点であった。元から秋斗が自身の望みの為ならばなんでも利用する者である事は理解していた。自分を軍師として使うという選択も、詠の予想の範疇にはあったのだ。ただ、この重要な場面で連携の容易い雛里では無く、共に練兵も何も行っていない負けてしまった軍師である自分を使いたいという事が異常に思えていた。
 本城から朱里を呼び寄せる時間も余裕も無く、愛紗にしても内部の安定に尽力しているので同様に呼び寄せる事は出来ない。袁家はどのような手段を用いて来るか分からない為に。
 例えば以前の州牧の後継、その自己顕示欲を擽った内部反乱が起これば、戦場での差配は容易に引っくり返り、本城の守りがいない状況では桃香の命も危うい。そのような事が起こらないように朱里が手を打ってはいる。しかし、まだ内部の安定が確立されていない状態では万が一という事もあるので愛紗や朱里、桃香自体が戦場へ来る事はまだ却下されていた。
 雛里によると、もうすぐ桃香自体も動ける程度には内の安定も一区切りつくとの予想であり、そうなれば全軍を以って袁術軍を叩く為に動ける。ここまで迅速に軍を動かせるのは一重に桃香達が本城で頑張った成果でもある。
 ただ、そのようにまだ本隊が動けない現在、秋斗達の駐屯している徐州南部に於いて孫権軍の参入で戦場は苦しい状態となるが、守り抜いて且つ大きく動かすには将、もしくは指揮を確実に出来る軍師が足りない。ならばと秋斗が考えたのが董卓の元で筆頭軍師を張っていた詠の存在。外敵による涼州への侵略を幾度も防衛し、対黄巾でも膨大な兵を操っていたという経験は間違いなくこの局面でも使える。
 雛里は渋っていたが、袁家本隊の対応にはさすがに正体が露見する事を恐れて送る事が出来ない為、秋斗の判断に首を縦に振る事となった。徐晃隊の最精鋭を率いた秋斗ならば一人でも抑えられるだろうと考えていたが……彼が徐晃隊の精鋭のほぼ全てを雛里に預けると言ったのも頷いた理由の一つ。徐晃隊と雛里の組み合わせは相性が良いので無駄な被害も抑えられ、鈴々との連携についても上手く行く事が予想されていた為に。

「確かに詠さん程の人に手伝って貰えれば徐晃
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