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象徴ストーリー
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ッチがあるかもしれないけれど、僕はやる気がないからそう言った。
「バカ」と女が言った。彼女の息は上がっていて、僕の鼻孔には女の体臭が。
「呪いならあるよ」と男が言った。
「やればいいじゃないか」と紳士が言った。
「やってくださいよ」と僕が言う。
「へえ」と女が言った。
 もしかすると空気が薄くなっているのかもしれない。僕は少し怠慢の空気を感じている。
「へえ、俺はホームランを阻止できるんだけどね」と男は言う。
「それは形而上のホームランですか」と紳士が言った。
それに対して男が憤って言う。「形而上のホームランって何? 野球のホームランよ、俺の言ったのは。形而上のホームランってあんた」
「形而上のホームランって下ネタですか」と僕が言った。紳士は黙っている。僕はよくセックスのことをホームランと言うんだ。僕の下腹部は少し熱くなっている。ここの空気は少し薄いし、少し熱い。
「早くしてくれないかしら」と女が言った。「少し空気悪くなったし」
 それからしばらく、僕の体には性欲が満ちて、静けさの中で男は何かを呪いはじめて、紳士は黙って、女は匂いを出し続けている。空気は薄くなって、僕は静かに雑念のない気だるさに包まれながら、男の念が空気を薄くしているのではないかという憤懣に駆られ、しかしながら何も言わず、背中にある壁に中指を立ててくりくりといじくっている。僕は、このまま何も物事は動かずに、呪いや、願いなどとは関係なく、このエレベーターが僕らを安全なところまで運んでくれるのだという幸せな思考に。そして、女の匂いに少し膨らんでしまった僕のペニスがこのまま硬くなってしまうのか、静かに冷えてゆくのかを探っている。

 扉は開いてしまった。

 扉が開いた瞬間、女は何を確認する暇もなく飛び出していった。僕ら三人は逃げてゆく女の後ろ姿を見ていた。僕の目には彼女の大きなお尻が焼きついている。僕は初めて同乗者の顔を見た。そして大きく膨らんだ紳士の股間を確認して、「おお、あなたも」と思った。
新しい空気が僕の意識を満たして、ここから出なくちゃ、と思ったときすでに扉は閉まってしまっていた。
 エレベーターはまた暗い箱になって僕らを運びだした。オレンジ色に光っていたボタンは、気付いた男に押しなおされるまで黒く死んでいた。

「オレンジ色の服を着ていたんですね」と僕が言った。二人が失笑した。彼女がオレンジ色のきれいなスーツを着ていたんだ。まったく僕らは暗闇で何を考えていたのだろう。脱出し損なってしまうのも無理はないよ。
「逃げるように行きましたね」
「臭かったんじゃないですか」
「彼女、悪者になったから吐き出されたのかい?」
「ドアの向こう行き止まりっぽかったけど、その向こういけるのかな」
「上の方がいい逃げ道ありそうですよね」
「まだ、呪い効く
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