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象徴ストーリー
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送っている。ちなみに内容を訊いてみた。彼がこの前買った風俗嬢のことだった。
僕は考えてみた。モーツァルトの絶対音感のように、緻密によくよく考えてみる。
 僕らはここを出たいと願っているのか? もし願っているなら何に願うのだろう? 神様? いや他には? 誰もいない。他には誰もいない。願いが純粋ならば神様に届くのだろうか? 人が何かを願うこと自体もうすでにそこには届かないほどの心の澱みが、神様の意識にまじわれないほどの澱みが生まれてくるような気がする。例えば『開けゴマ』なんて言葉を口にするとき、その人間にどれほどの純粋さが残っているだろう? 僕は意識の正しさについてイメージした。そしてすべての意識から不誠実を取り除いていった。そしてかすかな光に照らされている三人を見る。これらは神様を体よく口説いているレイプマンなのではないだろうか。そう考えたのだ。紳士の掌で転がされ、意思を注入されているのは吸殻ではなくて、汚れない肉体なのではないだろうか。男が執拗に押しているボタンから放たれているオレンジの光は傷口から漏れる血液なのではないだろうか。そして僕は女が何を犯しているのかを考えたとき、僕の脳裏に浮かんだのは、僕が初めて女性に体を開いてもらったときの開放感だった。好き放題に四肢と唇でむさぼる事を許された喜びを懐かしく思い出した。犯しているのは彼らだけじゃない。僕もだ。僕がそう思いついたとき、女の人がこう言った。
「私たち少し悪者になってさ、ここから吐き出されればいいのじゃないかしら?」
「悪者」と紳士が言った。
「もともと善人じゃないべ」と男が言った。
「あからさまじゃないといけないかと思って」と女が言った。
「ウンコみたいに出ちゃうのかい」と紳士が笑いを漏らしている。
「誰に対して悪者になるんだい」と男が言った。
 僕は一人で神様と思ったけれど、口にしなかった。しばらく誰も口をきかなかった。
そして僕は「西遊記みたいだね」と言った。紳士が「ドリフのだよね」と付け足してくれた。人形のドリフターズの面々が旅をするテレビ番組のことだった。巨大な人の体内に飲み込まれたドリフのメンバーが、上から垂れ下がる紐を引っ張って、最終的には巨人のクシャミで吐き出されるという感じだったと思う。このストーリーのもとはなんだったろう? 鯨に飲み込まれた少年の脱出劇だったろうか? その話の荒唐無稽ぶりが僕らの笑いを誘っている。女の人は話に参加せずに黙っていた。自分のイメージが出来合いのものにされてしまったから女は怒っていたのかもしれない。
「それにしてもテレビの言うこと真に受けるのかい」と男が言った。
「テレビを作る人も同じ人間だからね」と紳士が言った。「イメージするものに大差はないよ」
 僕は、引っ張るものなんて何もないよ、と言った。もしかすると闇の中に何か小さなスイ
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