象徴ストーリー
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れど」
「この箱密封されてないの?」と女の声がした。
「君は背が高いから天井を探ってみてくれないか?」と紳士が言った。
僕は手を伸ばし、さらに背伸びをし、足元に気をつけながらジャンプをした。ジャンプをしてもそれほどエレベーターは揺れなかったので、思い切りジャンプをした。僕は垂直飛びが七十センチもある。ジャンプが好きなのだ。
「上は随分高いみたいですよ。それにこれだけの人数がいても息苦しくならないし、空気は流れているでしょうね」と僕は答えた。
タバコはすべての人に配られた。この禁煙が蔓延している世の中で全員タバコを吸うなんて。
タバコの明かりで女の人の顔が確認できた。目のおおきい人だ。僕は、女の人がいたんだ、と思いながら薄闇の中を空気の流れに沿う煙を注視していた。ここでナンボほどの時間を過ごさなくてはならないのだろう? それでもエレベーターは止まっている事はなく、ただ上へ上へと僕らを運んでいる。それがどこかはわからないけれど。
タバコの光を見つめていると、他の四人が僕より背の低い事がわかった。僕は彼らの口元に光る赤い火を見下ろしながらエレベーターの大きさを思った。大きさというか、その僕らの意思と無関係に動くという存在としての超然さについて。
まったく人を無視して上に上に舞い上がりやがって。見たいとも思わないときに金閣寺を見せられるようなもんで、きっとどこかについても感動なんかしないでしかめ面でタバコでも吹かしたろうかしら? もともとおいらはどこに行こうとしているのかな。みんなの意思がまとまってないから無関係さを感じるほどあべこべな方にゆくのじゃないかな。まあ、多分おいらはどこに行こうと思っていたわけじゃないから。云々・・・
独り言は、僕の喉元に上がり下がりしながら、胸の中で響いたのか、外に向かって発せられたのか定かではない。他の皆もじっとして思考の風に吹かれているのかしら。誰一人として声を発することはなかった。
僕は不意にセックスな事を口にした。
「男の中に女が一人ですね」
箱の中に笑い声が響いたが、女のそれは聞こえなかった。気分を害しているはずの女の人に、僕はチンポがでかいから頭が鈍いの、と僕は言いかけてやめた。頭が鈍い事と、ペニスの大きさに何の関係があるのだろう?
何本目かのタバコを吸っている男が口をあけた。
「これ、別に外に出てもよいのじゃない? ボタンは押してもドア開かないんだから、無理やり連れて行かれるのでしょう? じゃあ僕らは僕らの意思を使うべきじゃない?」
「ドアをこじ開けると言うですか」と、僕は聞いた。
「安全な場所につれってってくれる保障あるの?」と、男は言った。
「君は導かれて着いたその先にも、導いたものの恣意がまみれていると思うのだね」と、紳士が言った。「いつも被支配感にさいな
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