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象徴ストーリー
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がいくつか。それはじっと目を見張ってようやく確かめても、そのすぐ後には霞んで消えてしまう。
ここはとても高い。ここの見晴らしは最高だった。しかし、いくら風景を眺めていてもわからない。何故僕らはこうして運ばれてきたのだろう? 僕は風景に目を凝らすふりをしてその中にある核心的なイメージの抽出を試みるのだけれど、中学生のとき見たセックスの幻のようにそれは指をすり抜ける。確かに人生はどこの海に流れ出るかも分からないような、他力に任せたものだけれど、こんな所まで連れてくるなんて。マッタク。
 拳の痛みが思い出される。それは肘を通って首まで。痛みを意識できるようになると、僕は僕になり始め、僕の体を包む僕色の空気が脱げてしまって、ピリッとした空気を感じる。そして僕の想像と扉が開いた事との関係性に意識を寄せる。それは僕のマスターベーションがAV女優にもたらす影響を考えるほど次元を超えたお馬鹿さんかも。

 犯されることのないそれぞれの石の佇まい。彼らは音もなく深い思索に耽るように。風は世界を縫って穏やか。時間を運ぶ。僕は心地よく立っていられる。
時はゆらゆらと流れて僕の回復と共に。時は確かに僕を癒している。僕の人生ではわからなかったことを、そのことを理解する事で得られる悟りで僕を癒してくれる。僕は小人物だと思う。なぜか理解できはしないけれど、小人物だと思ったんだ。
 風は右から左へ。僕が回れ右をすれば風は左から右へ。太陽は黄色く、世界は澄んだ青。変わらず時は流れゆく。


 僕は部屋で彼女の長い舌で愛撫されていた。下半身を剥き出しにして半ば欲情しながら、それを誇らしく見ていた。僕は陰茎に手を添える彼女に訊いてみた。
「長い階段のある塔を昇ったことはある?」
 彼女は舌を動かしながらしばらく考えていた。
「イギリスのお城?」
「イギリスよりもっとオリエンタルなもの」と僕は訊いた。
 彼女は首を振って彼女の舌が僕の乳首に触った。
「小さい頃の夢は何だったの?」
「パレード」と答えた彼女の口角に唾液の泡が出来ていた。
「パレード?」と僕は訊いた。
「紙ふぶきの舞うやつね」
「長い道のりを歩いて?」
「パレードだから車じゃない?」
「いじめられたことはない?」と僕は訊いた。彼女は人気者だったと答えた。長い舌でいろいろと芸をしたらしい。特に年長の人に可愛がられたらしかった。
 僕はあの塔が彼女の人生を象徴する何かであると思っていた。長い道のりを経て、彼女が辿り着いた景色を僕は見たのだと思いながら愛撫を受けている。僕は彼女の体の上に浮かぶ形而上の世界を思い浮かべている。そこには塔があり、痛みの向こう側にある悟りがあり、僕の胸をほのかに温める。僕はその世界に憧れを抱きつつ、彼女の舌に包まれた陰茎の興奮により、五感の支配する肉欲へと埋没していった
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