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象徴ストーリー
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。どうすればいい。どうする気も起きない。
 石の中で僕は一ミリたりとも僕以上じゃなかった。僕は、はみ出すこともなく、犯されることもなかった。一種究極の生き方なのだ、とインスピレートされた。そう浮かんだのだ。
 僕の前を、灰色の空間を、灰色の猫が歩いている。世界も猫も灰色だけれど、猫であることはわかったし、別におかしくなかった。それより心地いいデザインになっていた。灰色の背景と三次元に絡み合う赤い線とバックに馴染む黄色い目の猫。猫は赤い文様をするすると抜けて、たまに赤い溜まりのところの匂いをかいで振り返る。僕の傍を通り、向こうに行ってしまうまで、猫は鳴かなかった。僕を見て警戒もしない。ただゆったりと、世界の道筋を歩きなれた肉球で歩く、そんな感じだった。
 猫とは何か高尚な人物の生まれ変わりかしら? そう、疑問した時に僕の頭の中でテレフォンコールがなった。

ルルルルル。。。。ルルルルル。。。。ルルル。 カチ!

 電話の声は若い女の声だった。
「今どこにいる?」と若い女がこそこそと話している。
「だれ?」
「地下鉄の駅なの、ちょっとまずいからすぐだよ」
「だれ?」
「こないだあったでしょ?」
「どこで?」
「あったどころじゃないでしょ? あの地下鉄のね…」
「あったどころじゃないって!? なに?」
「地下鉄の!」
「なに? あったどころじゃないって!?」
「大事なものくれたでしょう?」
「大事なもの? 何! とても眠いの、俺」と僕は怒鳴った。
「何言ってんのよ、その大事なものがふらふらと出かけていってエライ大事な事になってんのよ!」と女も怒鳴った。
「俺はあなたに大事なものはあげてないし、大事になるなんて知らなかったし、大事な事になっても俺のせいじゃないだろ? 違う? 突然電話で名前も名乗らないなんてバカみたいだし、俺は眠いし、ここまで付き合っただけでも奇跡だ、切るよ」
「地下鉄の早稲田! 今す…」僕は女の電話を切ってしまった。

 地下鉄 早稲田駅 

行かなきゃいけないじゃないか。僕は仕事で駅近のバイトをしている。十年前に通っていた映画専門学校の職員なんだ。
 僕は断りの電話を入れようと思っていながら、シャツを替えて出かけようとしている。職場は近い。東京を東西に走る地下鉄でひといきだった。頭の中ではそこを避けようと考えているのに、リアルな自分はますます何も気にせず前に進んでいる。僕は顔を洗っている。顔を洗いながらさっき電話の向こうで起こっていたことを想像する。想像の的は固い気の塊みたいで、僕の思索を許してくれない。僕は平和ボケだから何事にも当たらないと考えて部屋を出てしまった。ウン、僕は宝くじにも当たらないからね。
 僕の体はそこに着くまで縮んではいないし、膨らんでもいない。僕の中身は僕からはみ出す事
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