象徴ストーリー
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彼女の長い舌を見慣れた午後の日に、温かい日が射していたから、僕は彼女の長い舌がどんな歴史を持っているのか聞く事ができた。彼女のそれは少し寒いから、そのことを聞くには温かい日差しが必要だったんだ。
僕らが出会ってから、彼女の舌の長さを克服して性交にいたってもやはりその長さは僕を躊躇させる。もう、何度となく性交で舌同士を交わらせたり、僕の陰茎を上手に勃起させてきたのに。その長くて細いものは、伸びる度に僕の世界の範疇を飛び出してしまい、米神に緊張が張り付く。
僕は思う。これは男性のペニスみたいなものだろうな、なんて。何度見ても自分のもの意外はグロテスクで、それでも目をそらせない、やるせなくも引力を持つあの種々様々な気持ちのよいモノたち。
彼女の舌はその良し悪しに関わらず、僕に刺激を与え続けている。彼女を抱くときはいつも体がダルダルと重く、性的な感覚が鈍くなり、じりじりとした痺れの中で腰を振れば彼女は何度となく頂きにゆくのだけれど、僕の方は必死の思いでゴールにたどり着く。僕は彼女の隣ですっかりと疲労に埋まりながら、下腹部の重みを感じている。このままでは前立腺がだめになりそうだな、と思う。僕にとっては数少ないチャンスなのだ。女の子をすぐに手放す事はできない。いつかその長い舌で、とてつもない快感が得られるのじゃないだろうか?
僕は彼女のかくぜつのよくない思い出話を、飛び飛びになるイメージの集まりを、頭の良い子が自分の想像力を学校の数学に当てはめるようにしつこく頭を回している。
彼女の長い舌は、絶倫男の赤黒い巨根みたいだ。僕はそう思った。彼女の話の中にいくらか見世物小屋の驚きが混ざっていたからだ。僕の脳みそのスイッチは『象徴』に変わる。
暗い世界で、僕は、足もすくみそうな何も見えない空間を、猫の仕草みたいに、霊感がある臆病者のように、くるくると首を回して見ていた。時に足元をすくいあげるような大きな揺れを、自分のめまいのように感じながら、上へと昇ってゆく箱の中にいる。経験的に、雰囲気でここはエレベーターのような気がする。黒い世界は壁を消してどこまでも黒い。暗闇は、手探りで見つけた世界の終わりの向こうまで続いているように感じる。思考を散々廻らしたその向こうまで続いているように。
だだっ広い世界は、今までの光ある、地平線のある、罪と罰のある世界は実は、人間が逃げ込むところであるのだ、なんて言いそうな雰囲気だ。ここには許しなど一つもないのだよといわんばかり。悲観的に逸る心で及び腰にやっと手に触れた壁はひんやりと冷たくて、硬い。とりあえずの安心と、行く先の不安。
僕は手探りでボタンを押した。僕のイメージは現実と符合する。エレベーターのようなものらしい。エレベーターだろうか? エレベーターと考えても悪くはないだろう。
「世の中が価値を
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