第十二話 目覚めの一端
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打って変わって、場が静かになり、誰も喋らない。僕たちはサクモさんや、クシナさんを見て、様子を見てしまう。
「ミナト、攻撃部隊のほうが心配だ。先を急ぐぞ。」
サクモさんがその空気を割いた。この空気を読んだのだろうか。
「あ、はい。そうですね、すぐ行きます。クシナ、三人を頼んだよ。」
そう言って、二人は一瞬で消えていった。
す、すごい、何て速さの“瞬身の術”・・・
クシナさんは二人を見送ってから、僕たちの方に振り向いた。そして、膝を折り、僕たちの目線に合わせてから笑ってくれた。
「もう、大丈夫だってばね!」
僕たちは、その笑顔にどれだけ救われただろう。初めて戦場に出て、気がついたら敵の攻撃に晒され、仲間ともはぐれ、“死”を目の前にした。緊張し、心配し、恐怖し、不安に自分の心をめちゃくちゃにされた。それを・・・全部まとめて受け止めてくれるような笑顔だった。
それからクシナさんは、僕たち三人を抱き締めてくれた。三人同時にぎゅっと、抱き締めてくれた。
暖かかった。
優しく、そして力強く、抱き締めてくれる感じは、何だかお母様に抱き締めてもらっているような気がした。
「よかった、本当によかった。みんな、よく頑張ったってばね。」
僕たちはきっと酷い顔をしていたと思う。くしゃくしゃにして、大きな泣き声をあげて。クシナさんに抱き付いていた。
涙がいつまでも止まらなかった。
溢れて溢れて、止まることを知らなかった。
そんな僕たちを、クシナさんは泣き止むまでずっと抱き締めてくれた。
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