第十二話 目覚めの一端
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気持ちをどこかにぶつけたくて・・・ただ、突っ込んだ。
だけど、そんなものが相手に通じる訳がない。下忍にもなっていないただのガキの一発が、相手に届く訳がない。
案の定、僕は腹に強い衝撃と痛みを感じて、何メートルも向こうに吹っ飛んだ。
「おいおい、ただ突っ込んで来るなんて、何考えてんだ?」
「「イナリ!!」」
ハナと カタナが吹っ飛んだ僕に向かって叫んだ。
「っー・・・」
腹の強烈な痛みに動くことも、言葉を出すことも出来ない。それでも状況を確認するために周りを見渡した。僕は結構吹っ飛んだらしい・・・彼らが遠くに見える。
痛んだ身体に鞭を奮って立たせる。
早くしないと、今度は本気で攻撃してくるかもしれない。
まだ、彼らは僕たちを甘く見ていて、すぐには殺そうとしていない。でも、いつかは殺される。分かりきっている事だ、生きてここから逃げられるほど甘くはない。
もう一度、あちらを見る。
彼らはもうこちらを見ていない。蹴り一発でぶっ飛ばした相手なんて、もう興味がないとばかりに意識すら向けていない。その代わりに、ハナと カタナに向かっている。次はお前らだと言わんばかりだ。
くそ、やめろ、やめてくれ!
頭の中に二人が殺されるイメージが浮かぶ。
頭から血を流し、虚ろな目で僕を見ている ハナ。
片腕を切られ、腕をなくし、口から血を流す カタナ。
ダメだ、そんなのダメだ!
嫌なイメージが浮かんでは消えて、消えては浮かぶ。
僕の心はもう限界だった。いろんな気持ちが混ざりあって、膨れて、大きくなって、溢れようとしている。
「っ、やめろぉぉ!」
彼らに向かって大声で叫ぶ。自分を奮い立たせるように、または心に溜まったものを吐き出すかのように。
僕は彼らに向かって走り出そうとした。でも、走り出せなかった。自分の足下で何かを蹴った。重く、硬いものだ。それはゴトンと言う音を立てて、僕の目の前に転がり出た。
それは・・・丸い塊だった。
それは・・・見知った人の顔をしていた。
そこには・・・人の顔が転がっていた。知っている顔、さっきも頭の中で思い出した顔。・・・・ハカリの顔。
虚ろな目で僕を見ていた。髪は血で固まったのか、頬にこびりついている。口許は緩み、赤黒い血と何か分からない半透明な液体が垂れ流れていた。その他の部分は、火傷で元が何だったのかも分からない。ぐちゃぐちゃで、どす黒い“モノ”だった。
その“モノ”は、首から下がなかった。
文字通り、ハカリの顔が転がっていたのだ。
走り出そうとしていた体が硬直し、何も考えられない。
“死”
その言葉が頭の中をぐるぐると回ってい
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