02:第四真祖の優雅じゃない日々
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輩のお兄様ですか?」
雪菜が眉をひそめる。小さく「そんなの記録書にはなかったような……」と呟いたのを聞いたものはいないが。
「ああ。《戦王領域》で行き倒れてたところを親父が拾ってきてな……記憶がなかったから、当時生まれたばっかりだった俺と合わせて、《魔城》っていう名前を付けたんだと。親父は《牙城》だしな」
魔城は義理の弟である古城から見ても、非常に良くできた青年である。優しいし、頭もよい。何よりその容姿は目を引かざるを得ないほどの良さである。
「それに魔城兄は、正体が分かってる限りでは凪沙が唯一怖がらない魔族なんだ」
「へぇ……」
古城の妹である暁凪沙は、幼いころに会った魔族がらみの事故のせいで、魔族恐怖症になってしまっている。魔獣などの一部の魔族には恐怖を示さないが、まだ吸血鬼や獣人などは苦手である。決して魔族差別主義なわけではなく、本人も克服したいと思っているらしいのだが。
古城が第四真祖になってしまったことを隠しているのは、彼女をおびえさせたくないという理由がある、というのを、この場で知っているのは雪菜だけだが。
「っていうか、今の口調だと正体が分からないなら大丈夫みたいな意味に聞こえるぞ」
「え!?あ、いや。無自覚なら問題ないから、そういう意味で……」
「ああ、そう」
基樹のセリフに動揺しつつも、何とか受け流す古城。
「先輩のお兄様は何の魔族なんですか?」
雪菜が興味深げに聞いてくる。
「ああ、魔城兄は吸血鬼だよ。もっとも、吸血してる所なんて見たことないけどな……」
吸血鬼の最大の特徴ともいえる《吸血行動》。これは、一般人の抱く『食欲』からくるのではない。吸血鬼が血を吸いたいと思うのは、魅力的な異性に対してのみ。つまり、《吸血行動》のトリガーになるのは『性欲』なのだ。
魔城は聖人君子もかくやといえるほどの、性欲と無縁な男だった。彼が吸血しているのを、古城は一度も見たことがない。
「二年前にふらっと旅に出て以来会ってないからな……そうか、戻って来るのか……」
古城はファミレスの窓から、外の光景を眺めた。太陽はいつもよりやたら元気に大地を照らしているが、しかし島は静かだ。
それは、嵐の前の静けさだったのかもしれないが。
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