第九話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その3)
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如き行為をする、いわば反逆者をこの屋敷に入れる事は出来ません」
「な、何を言われる」
「シュトライト准将、その愚か者を叩き出しなさい」
「はっ」
シュトライト准将がコルプト子爵の腕を取る。嫌がるコルプト子爵にエーリッヒが追い打ちをかけた。
「アンスバッハ准将、リッテンハイム侯に伝えてください。ブラウンシュバイク公爵家はコルプト子爵家との関係を断つと」
「承知しました」
コルプト子爵が連れ出されるのを見届けてからアンスバッハ准将がエーリッヒに問いかけた。
「リッテンハイム侯にコルプト子爵家に対して当家と同様の処置を執られたいと申し入れますか」
エーリッヒがアンスバッハ准将を見た。冷たい視線だ、余程に怒っている。
「その必要は有りません」
「しかし」
エーリッヒの視線が強まった。
「私がブラウンシュバイク公爵家に入ったのはブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家、政府、軍の妥協によるものです。リッテンハイム侯がそれを忘れ私よりもあのような愚物を選ぶと言うならそれも良いでしょう」
言い終えるころには笑みを浮かべていた。アンスバッハ准将も何も言えずに沈黙した。一礼して部屋を出ていく。
拙いな、部屋には俺とエーリッヒの二人だけだ。エーリッヒが怒っているのが嫌でも分かる。アンスバッハ准将も余計な事を言ってくれた。何も言わずに出て行ってくれた方がはるかに良かったんだ。後で文句の一つも言わないと割が合わん……。部屋の空気がピリピリしている、後でクリームを塗らないと肌荒れになるな。俺はこう見えても乾燥肌なのだ。
「アントン、座らないか」
「いや、俺は」
「遠慮しなくて良い、客は帰ったんだ」
逆らえん、観念してエーリッヒの前に座った。電気椅子にでも座った気分だ。
「アントン、卿らはあんな馬鹿の相手をさせるために私をブラウンシュバイク公にしたのか」
「……」
あ、いやそういうわけじゃないんだ。あれはちょっと酷いだけで他はもう少しましだ。だから頼むからその腕トントンは止めてくれないかな、俺達は友達だろう、親友じゃないか。
「何故黙っている」
「あ、いや、その」
だってあれはちょっと酷いだけですとは言えないだろう。それにああいう馬鹿の相手をするのがブラウンシュバイク公の仕事だとも言えないじゃないか。だったら沈黙してる方が疲れずに済む。卿だって嫌な思いをせずに済むだろう。
「あんな奴の盟主だって? まるで濡れ雑巾で顔を拭かれたような気分だ」
「それなら、き、気分転換にココアとかどうだろう」
「要らない」
にべもない返事だった。ココアは気分転換には良いんだけどな、甘いものを摂ると気分が落ち着く。これからは応接室には必ずケーキを用意させよう。それとキャンディだ。必需品だな。
部屋のドア
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