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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第九話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その3)
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すよ、グレーザー医師から全て聞きました」
「……」
穏やかな表情のエーリッヒ、そして対照的に引き攣った表情のコルプト子爵……。

「貴方は弟であるコルプト大尉をミッターマイヤー少将に射殺された。非は軍規を乱したコルプト大尉にあります。しかし貴方はそれを受け入れられないのでしょう。ミッターマイヤー少将に復讐しようとしたが彼は今ミューゼル大将の部下になっている」
「……」

「ミッターマイヤー少将に復讐するにはミューゼル大将が邪魔です。いや、それ以前に彼を庇おうとするミューゼル大将が許せなかった。そこで貴方はミューゼル大将に敵意を持つベーネミュンデ侯爵夫人に目をつけた……。違いますか」
「……」

「言っておきますが、ミッターマイヤー少将をミューゼル大将の元へ送ったのは私ですよ。既に知っているかもしれませんが……」
「この件についてはお口出しはお止め頂きたい」
強張った表情でコルプト子爵がエーリッヒを遮った。目は血走っている、大丈夫か、こいつ。

「復讐は貴き血の欲するところ、高貴なる者の持つ義務なのです。閣下はリメス男爵家の血を引いておいでです。その御身体には我ら同様高貴なる血が流れています。ですが残念な事に閣下は平民としてお育ちになられた。そのせいでしょう、どうも閣下はその辺りがお分かりではないようですな」

とんでもない奴だな、エーリッヒを相手に貴族について説教だと。おまけに高貴なる者の義務が復讐? 俺もいい加減貴族とは馬鹿揃いだと思っていたがこいつは極めつけの馬鹿だな。いや、こんな馬鹿だからベーネミュンデ侯爵夫人なんて頭のネジの緩んだヒス女を利用しようなんて考えたか。俺ならとてもそんな気にはなれん。

アンスバッハ准将に視線を向けた。無表情にエーリッヒを見ているが内心では何を考えているのやら。思わず溜息が出そうになったが堪えた。こんなところで溜息を吐いたらエーリッヒがどう思うか……。他人事みたいに溜息を吐くな! 誰の所為でこんなバカの相手をしていると思っている! 怒りまくるだろう。

「分からなくて結構。私が理解しているのはコルプト大尉が軍規に違反したという事です。軍規を正せと言うのは陛下の御意志でもありました。ミッターマイヤー少将がコルプト大尉を射殺したのは軍規を正したまでの事。陛下の御意志に沿ったまでの事です。それを復讐? 自分が何を言っているのか分かっているのですか?」

あーあ、怒ってるよ。口元には笑みが有るけど目は笑っていない。おまけに口調は丁寧だが微かに侮蔑が有る……。その内右手で左腕を叩き始めるぞ。そうなったら噴火五分前だ。エーリッヒ、頼むぞ、怒りはそいつだけに向けてくれ。俺達には間違っても向けるなよ。とばっちりはまっぴらだ。

「分かっておりますとも。軍規がなんだと言うのです。我らは貴族、我
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