第五十七話 全てが終わってその十
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「子供の教育にも悪いわよ」
「実際にそう思うわ、お母さんもね」
「そうよね」
「そう、本当にね」
「清原は巨人に行ってからああなったのよ」
その言わずと知れた日本の深刻なそれこそ骨髄に至っている悪しき病の象徴であるそのチームにだというのだ。
「もうね」
「三振するだけの選手に」
「人相が変わったわ」
勿論悪くだ。
「西武時代ははっきりとした爽やかな感じだったの」
「それが?」
「そう、あんなのになったの」
こう話すのだった。
「お母さん一回巨人の試合をテレビで観てびっくりしたから」
「清原の顔が変わったことに」
「そう、こんなに人相悪くなったのかしらってね」
「そこまで変わったのね、清原って」
「走れたし守れたし」
あくまでかつての清原だ。
「確かに内角には弱かったけれどね」
「清原も走ることが出来たの」
「守ることも出来てね」
「番長じゃなくてアイドルだったのね」
「口だけじゃなかったのよ」
人は言う、清原は口だけ番長だと。ストレートしか打てなくなって勝負しろと言ってその相手に無視された醜態も晒している。
「四番に相応しかったし」
「そうした人だったの」
「本当に信じられないでしょ。昔は漫画の主人公でもあったのよ」
尚これは巨人時代もだ。
「やっぱり未来の球界を背負って立つ若きスターだったのよ」
「それがどうしても信じらないのよね」
「西武が舞台よ」
その西武ライオンズがだ。
「このこともびっくりするでしょ」
「西武ねえ。ちょっとね」
琴乃の中では時々優勝するがそれ程気にならないチームだ、関西人である彼女から見れば特にそうだ。
「地味?かしら」
「今じゃそうよね」
「うん、私から見ると」
「主力が殆どいなくなったからね」
よりによって指導者になれる人材、指導者になっている人材に片っ端から逃げられては弱体化するのも当然だ。
「伊東さんにも逃げられたしね」
「今あの人自分はロッテの人間だって言ってるわね」
「秋山さんだってそうでしょ」
そのソフトバンクの監督もだ。
「あの人も西武のスターだったのよ」
「だった、なのね」
「そう、だったなのよ」
言葉は過去形だ、過去形の言葉は時として特にスポーツの世界ではこの上なく残酷なものとなってしまう、
「他にも一杯出て行ってね」
「ううん、それで弱くなったの」
「地味にもなったの」
「何でそうなったのかしら。清原はいいとして」
「どう見てもコーチとか出来ないからね」
そのせいか清原は引退後何処かのチームで指導者になったことはない、実績だけは素晴らしいというのに。
「他の選手はね」
「殆ど出たのね」
「黄金時代のメンバーとかがね」
「そんなの阪神じゃとても」
「考えられないでしょ」
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