SAO編
第一章 冒険者生活
9.こだわりを求めて
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えて洗っていた下着も、この世界じゃ汚れることが無いから着替える必要も無い。だから洗う必要もない。でもずっと穿いているのは抵抗がある。洗えるのが一番精神衛生上的にもいいんだけど、そんな場所は無い。私が知らないだけかもしれないけど、もしあったとしてもそんな場所は限られてくるだろうし、更に干す場所なんてもっと限られてくる。そうして色々なことを諦めた結果、妥協として店売りの下着をその日その日で使い捨てにする。店売り下着は決して安くもないわ。積極的に戦ってもいないのに買い続ければ破産してしまう! でも穿き続けるのも嫌っ! 安物を穿くのも嫌ぁっ!」
目を見開いて口を大きくあけ、オオカミ男が遠吠えでもするように体を反りながら叫ぶお姉さん。正直こわい。
だけど次の瞬間。何かに気づいたようにビクンッと体がはねた。
「って、ああっ!? よくよく考えればこれも一時を凌ぐだけだったわ……ね。ふ、ふふ……今回仕上がった《ソフトハーテッド・ショーツ》も十五枚しかないし、あなたたちに渡しても焼け石に水、よね…………ごめん、なさい……」
このお姉さん、寝起きのせいか言語が支離滅裂でしかもテンションの上下が激しいよ。
今はこの世の終わりの顔をしてガクッと膝をついて頭をたれている。
かなりシュールな光景だ。垂れた長い髪で顔の見えなくなっているお姉さんが「パンツー……パンツー……るーるるるるー……」と呪詛を撒き散らしている。
まあでも、お姉さんの言ってることはわたしには、というか多分わたしたちには理解できたと思う。
要は『毎日パンツ換えたい→洗うことが出来ないから買う→質も満足出来ないしお金もかかる→満足いくものを自分で作ったけど数も少ないしもっと作るにも素材がない→うわーんっ』ということだ。
その気持ちはよーく解る。
なんてったってわたしたちも通った道だ。
『通った』過去形だ。わたしたちは――質とかはともかく――お姉さんのその悩みを解消しうる情報を持っている。むしろお姉さんさえいれば質の問題も解消できるんじゃないだろうか。
「……」
ネリー、レイアと無言のアイコンタクト。
キリュウさんは部屋の端で眉間に少し皺を寄せながら目を瞑って、我関せずモードだ。まあそれもしょうがない。話題が《パンツ》なんだって意識したらわたしまで恥ずかしくなってくるし。
お姉さんよ、年頃の男の人がいるんだから少しは自重しようよ。
「あのー、ちょっといいッスか?」
「……?」
わたしの呼びかけに、お姉さんは少しだけ頭を上げてわたしを見てきた。長い前髪の隙間から覗く蔭った上目遣いの瞳が、サ○コみたいでちょっとホラー。
「えーっとッスね、わたしらは別に毎日毎日、そのー……使い捨ててるわけじゃないッスよ?」
男
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