SAO編
第一章 冒険者生活
9.こだわりを求めて
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低く、先ほどの醜態がなければカッコイイと思ってしまうような声だった。
「……はい。そうです」
今まで黙っていたキリュウさんが静かに答える。ネグリジェ姿の女性を前にして冷静に見えるこの人は、はたして平静を装っているのか異性に興味がないのか。
――どっちにしても、なんかいやッスねぇ。
わたしが自分勝手なことを考えてる間にも話は進む。
「本当にありがとう! 君たちのお陰で目的のモノ……少なくとも及第点のものを作ることはできたわ。まだまだ満足はしていないけれど。ええ、勿論この程度で満足するものですか! 今回は最低限の肌触りが達成できただけに過ぎないわ。目指すは、更なる高みよ……!」
どうしよう。目が覚めたと思ったら、お姉さんは今度はいきなりトリップした。
目を輝かせながらあらぬ方向を見て、こぶしを握りしめながら力強く語っている。
わたし含め、キリュウさんですら唖然としていた。
「おーい。帰ってきてよー。みんな呆れてるよー」
「……はっ」
バートさんの呼びかけにより、お姉さんは正気へと返り咲いた(?)ようだ。
お姉さんは再びコホンと一息。そして今までのことが無かったかのように話しかけてきた。
「そうそう。まだ報酬の話をしていなかったわよね?」
「あ、はい。そうッス……ね」
――待〜ってましたッスー!
どんどんぱふぱふーと脳内効果音を鳴らせて喜ぶわたし。もちろん外面はポーカーフェイスですよ。
相手が年上ということもあって、こちらから「依頼の報酬ちょーだい?」とは言いづらい。
向こうから言い出してくれるのを今か今かと待っていたのだ。
「えーっと……」
――見た目かわいく! かつ機能的で動きやすく! でも絶対領域は永遠不滅よ? ってな一品をゼヒィィッ!!
わたしは思いの丈を、無言の念波に乗せて相手に向けて放った。
「そうね……うん、ちょうどいいわ。じゃあ、あなたたちが取ってきてくれた《コットン・フェザー》を使って午前中に作ったものを渡しましょう。女の子なら絶対気に入ると思うわよ。私が保障する!」
お姉さんは両手を腰に当てて胸を突き出すようにして言った。なにやら自身満々のようだ。
――も、もしかして……祈り、通じたッスか……?
お姉さんは「フフッ」と意味深な笑みを浮かべて奥の部屋に入って行った。持ってくるらしい。
わたしとネリー、そしてこのときばかりはレイアも、顔にわくわくと書いてあるように期待した様子でお姉さんが戻るのを待っていた。
…………でも、わたしはこのとき気付かなかったのだ。
部屋の隅っこに佇んでいたバートさんが酷く申し訳なさそうな顔をしていた、ということに……。
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