『三十四話』〜歌姫を探せ 後編〜
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ただけで何もしねぇよ。俺達が用があるのは『月夜の歌姫』だけだ」
「なんですって!?」
俺に?
「歌姫とアタシ達に何の関係があんのよ!!」
「いや、特に関係はねぇさ。ただ、ある噂を聞いてな」
「噂?」
噂? 俺が知ってる中で誘拐なんかに通じるような噂は無かったはずだが……
「あぁ、歌姫の歌声が様々な所でほぼ毎日聞こえるのは知ってるか?」
「当然よ。そんなの海鳴のほとんどの人が知ってるわ」
「だろうな。ある日のことだ。その日は海鳴公園で歌姫の歌声は流れて来たんだが、突然止まったんだ」
「? 何で? 私が知っている中では途中で歌が中断されたことは無い筈よ」
「まぁ聞け。歌声が止まって一分もしないうちに公園の近くで大きな轟音が響いたんだ」
「何があったんですか?」
話が気になったのか、黙り込んでいたすずかが男に尋ねた。
「轟音のした場所には地面に突き刺さった無数の鉄柱とそのすぐそばに座りこんだ女性がいたんだと」
「それは鉄柱が降ってきたってこと?」
「そのとおりだ。女性は茫然とした状態だったらしい」
「それは当然だと思うの。すぐそばに鉄柱が降ってきたんでしょ? 誰でもそうなると思うの」
なのはも話に参加してくる。
「ここからが重要なんだよ。その女性はたまたま近くに鉄柱が落ちて来たんじゃなく、誰かが真上から降って来た鉄柱から助けてくれたって言ってたんだ。周りに誰もいなかったのにだぞ?」
「女性を助けたのが『月夜の歌姫』だって言いたいの?」
「そういうもっぱらの噂ってだけだ」
なるほど。この事件の全容が見えてきたぞ。
「つまり……その噂を再現してるんですか?」
「まぁ……そうだな」
「……馬鹿じゃないの?」
アリサの意見に激しく同意だ。何の根拠でそんな噂を信じたんだか……
というかアイツよくしゃべるな
「仕方ないんだ! もうこれしか方法がないんだよ!!」
「仕方ないって何がよ!? どんな理由があんの!?」
「それは……まぁいいか。勝手に連れてきちまったしな、お詫びだ」
おしゃべりスカウトマン男の話では彼らは万屋……所謂なんでも屋で唯雇われただけらしい。
仕事内容は『月夜の歌姫』のスカウト、少なくとも事務所には連れてこいとのこと。
だけど相手は誰も見た事のない、存在しないかもしれない人間だ。捜しようがない。
情報収集や張り込みなど、様々な方法で捜したが姿のすの字も見えてこない。
そこに先程の噂が耳に入った。
そのことをクライアントに報告するとクライアントは誰かを誘拐して誘いだせと命令したのだ。
いくら何
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