DAO:ジ・アリス・レプリカ〜神々の饗宴〜
第二十一話
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べヴィティールの《ギア》の一つである魔導書で、言ってみれば《遠見の術》を発動させるものだ。その術の効果で、鏡の様な物体が出現している。もちろん、写されているのはべヴィティールではなく、《央都》へと達した《勇者》達だ。
できることならば、彼らを逃がしてやりたい。できることなら、彼らに「来てはいけない」と忠告をしてやりたい。実際、べヴィティールの持つ魔導書の一つを使えば、彼らに声を届けることも可能だ。だが――――
それは、絶対に許されない。それを行った瞬間、自らの後ろに立つ人物が、自分を殺す。
「始まるな、惨劇が」
その人物――――水の色とも、空の色とも異なる、青い長髪を持った少女が、嬉しそうに呟く。べヴィティールが何か不審なことをすれば、彼女によって八つ裂きにされてしまうだろう。
「(わが身を犠牲にしてまで人を助けよう、とは考えないあたり……私も”良くない”のね)」
こころの中で嘆息する。本当に善の心にあふれた者ならば、死ぬことが分かっていても彼らにコンタクトを取ろうとしただろう。結局のところ、べヴィティールも最後には自分の身が可愛いだけの偽善者なのだ。
――――《あの存在》が好きそうな内容だ、と思う。結局は自分という存在も、この青髪の少女も、遠見の鏡に映しだされた青年達も、《あの存在》によって創られ、管理され、踊らされているに過ぎない。それを振り切ることはまず不可能だし、振り切る気も起きない。
「土の王、《六王神殿》区画入口付近、第一コロッセオの監視を強化せよ。同時に《転移門》の魔術を準備。私をすぐに転移させられるようにせよ」
青髪の少女が指示を出す。逆らってはいけない。無言でべヴィティールは用意をする。《ギア》のうちの一つを取り出す。この魔導書には転移の魔術を無尽蔵に使用させるための術が刻まれている。
同時に、既に使用していた《遠見鏡》の魔術を強化する。青年達を写した鏡の隣に、もう一つの鏡が出現する。
そこには、三人の自らと同格の存在が写されていた。
無邪気な笑顔を浮かべる親友、リ・エリューラ。
憎悪によって歪んでしまった顔のオウエン。
こんな状況でなお表情の変化を見せないフェーレイ。
いちばん動揺しているのはきっと自分だ。そして多分、それは青髪の少女にも、あの白い女神にも、その上、《あの存在》にも知られている。
にやり、と青髪の少女が歪んだ笑みを浮かべ、祝詞の様に呟く。
「確か、こうだったか……”さぁ、今宵の恐怖劇を始めよう”」
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