第四章
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ミアに対して同情的であったコリントの人々もまた言葉を失った。そのラミアの影は。
笑っていたのであった。下半身が大蛇の妖女が嘲るような笑みでいたのだ。ラミアは泣いていたが影は笑っていたのであった。
「こういうことだ。これがラミアなのだ」
「これが・・・・・・」
「何ということだ」
ユリニウスもコリントの人々も言葉がなかった。あまりにも異様な禍々しい影になっていたからだ。
「この銀や姿と同じなのだ。ラミアの涙は偽りなのだ」
「偽りなのですか。何もかもが」
「それは自分でもどうすることができないのだ」
哀れみも同情もなく。ラミアのことを言ってみせた。
「何故ならそれが魔物なのだからな」
「そうなのですか」
「それで」
「何ということか」
「二度は言わぬ」
アポロニウスはここまで話してまたラミアを見据えた。そうして勧告するようにして告げるのであった。峻厳な声で。
「立ち去れ。よいな」
「はい・・・・・・」
ラミアは今度は泣かなかった。項垂れるだけであった。しかし見れば影は憤怒の姿で神を振り乱していたのであった。
「今度もまた」
「影が」
「やはり魔物ということなのか」
「これは」
コリントの人々もその影は見ていた。そうして言い合うだけであった。
「影は全てを語る」
アポロニウスは言う。
「若しここで暴れ回るのならよし。しかしそれならば」
「それならば」
「最後に御前は死ぬことになるだろう」
全てを否定する言葉が発せられた。
「結局のところはな。若しくはわしが御前を滅する」
「・・・・・・・・・」
アポロニウスは本気であった。本気でラミアを滅ぼすつもりであった。そうして彼女にコリントからすぐに立ち去り弟子であるユリニウスの前から姿を消すように告げるのであった。有無を言わせぬ言葉で。
「よいな。それでは」
「わかりました」
ここに至り。ようやくラミアも頷くのであった。彼女としてもそうするしかなかったのだ。
「それでは。もうこれで」
「そのまま。砂漠へでも去るのだ」
アポロニウスは言う。
「誰も御前の姿を見なくともすむ砂漠へな。去るのだ」
「そうして永遠にですか」
「御前が死ぬまでだ」
また峻厳な言葉がラミアに与えられた。
「わかったな。それでは」
「はい・・・・・・」
最後に頷いて姿を消す。その瞬間にその場にあった食器もテーブルも料理も全て消えてしまった。後には何も残ってはいなかった。コリントの人々もこれには呆然とするばかりであった。
ユリニウスは危ういところを逃れアポロニウスは名を残した。しかしラミアがその後どうなったかは誰も知らない。砂漠で見たという者も聞かない。ただ後に砂漠で項垂れて泣くばかりの美女を蜃気楼の中で見たという話が残っている。これが
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