第三章
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拶をしてきたのであった。
「はじめまして」
「はい」
アポロニウスは彼女を見据えながら挨拶を返した。それが終わるとすぐにユリニウスがアポロニウスに対して言ってきたのであった。
「何度もお話していますが私の妻です」
「になる方じゃな」
「そうです。如何でしょうか」
言葉を訂正しながら師にまた問うのであった。
「この方は」
「美しいな」
それは素直に認めた。
「そうでしょう。これ程美しい方は私は見たことがありません」
それがユリニウスの自慢のようであった。しかしアポロニウスは今は笑ってはいなかった。警戒する顔でじっと美女を見ているだけであった。
「ですからこうして」
「人のものとは思えぬ」
ここでアポロニウスは言うのだった。
「全く以ってな」
「そこまで褒めて頂けるとは」
「違う」
だが今度は否定する言葉を出した。
「それはな」
「!?一体どうされたのですか?」
ユリニウスはここでも師の言葉の意味がわかりかねた。今度は目をしばたかせる。
「また。先生らしくもない」
「ユリニウス。そして皆様方」
だがアポロニウスは弟子のその言葉には答えずに彼と客人達に対して声をかけてきた。そうしてここでその両手にそれぞれ持っていた銀の杯と皿を上に掲げてみせるのであった。
「これは銀ですな」
「はい」
「確かに」
ユリニウスも客人達も彼の言葉に答える。
「それが何か」
「あるのでしょうか」
「とくと御覧あれ」
それがアポロニウスの彼等の言葉であった。そう言うと杯と皿を上に向けて放り投げて見せたのである。
「先生、何を」
「そんなことをすれば折角の銀に」
傷がつく、と皆言いたかった。しかしここで誰もが、アポロニウス以外は思いもしなかったことが彼等の目に映ったのであった。
何と銀の杯と皿が落ちて来ないのだ。そのままふわふわと羽根の様に左右に揺れる。そうしてゆっくりと地上に舞い降りようとしているのであった。
「これは一体・・・・・・」
「どういうことなのだ」
「これには事情があるのです」
アポロニウスは宙にふわふわと揺れる杯と皿を指差して周りの者に告げた。
「事情とは」
「これが人の仕業ではありませぬ」
次に美女を見た。人々の視線がそこに集まるのをわかったうえで。
「人の仕業ではないとすれば」
「異形の者。そう」
そして言う。
「ラミアの仕業です」
「ラミア!?まさか」
「そう、そのまさかです」
また周りの者に答える。そうしてラミアの説明をはじめるのだった。
「かつてエジプトの王女でありゼウスと結ばれ多くの子をもうけた絶世の美女。しかしそれに嫉妬したヘラにより子を、これから産む子も全て殺され眠りさえ奪われ半人半神の異形の魔物となり人を貪り食う魔物と化し
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