12『鍋魔人(?)との遭遇』
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ヘルメスが近づくと、店主と思しきNPCが、やる気のなさそうな声を掛けてくる。店主は、裸の上半身に、黒いバンダナを撒いていた。首にはじゃらじゃらした奇怪なネックレス。腕にも同様だ。頭に巻いた黒いバンダナには、奇怪な模様が描かれている。さらには浅黒い肌には、無数の奇妙な刺青。一見して怪しいと分かる外見である。
「……この釜を売ってほしいのだが」
その言葉を聞くと、NPC露天商の眉がぴくり、と動いた。露天商の男は、こちらを見ると、そのだみ声で言った。まったく、子どもが聞いたら泣いて逃げそうな声である。
「……兄さん。本当にいいのかい」
「……どういうことだ?」
SAOのNPCは、多数がそれなりに高度なAIを与えられている。そのため、多少の会話が可能だ。もっとも、最上級のAIではないので、既定のセリフでないと会話が成立しない場合があるが。今回は、会話が成立したようだった。店主が答える。
「この鍋はね、危険だよ」
「……構わない」
「……そうかい」
すると、店主は、《錬金釜》をずい、とこちらに押し出してきた。ヘルメスは、その場にしゃがみ込むと、その鍋とも釜ともつかないアイテムの蓋を、こんこん、と二回たたいた。現実世界では、これが《錬金釜》に住まう魔人召喚の為の簡易儀式だったのだ。この世界ではそれがうまく発揮されるのかどうかは疑問だったのだが……。
『なんじゃワレェ!?』
……唐突に、ヤンキーっぽいセリフが、《錬金釜》から飛び出した。ヘルメスは予想していなかったジンの口調に面食らってしまう。しかし、何とか気を取り持って、こう言う時どのように言えばよいのかを模索する。
「……俺は、お前の主になる男だ」
『ほーう。つまりは《錬金釜》の魔人たるこの俺様に勝とうっていう愚か者かい。いいだろう。叩き潰しちゃる』
ばかっ!と、いきなり《錬金釜》の蓋が開いた。ヘルメスは本能的にその場を飛びずさる。すると、開いた《錬金釜》の口から、もくもくと白い煙が湧き出してきた。それは、次第に人の形をとり……ぽむん、という音と共に、《錬金釜》の魔人が姿を現した。
「ワイの名は鍋魔人のジンバ!!」
「……《錬金釜》なのに鍋魔人なのか……」
「う、うるさい!あんたがワイに勝てたら、ワイはあんたの物や。ただ……勝たせる気はありまへんがな!!」
じゃりぃいん!と音を立てて、どこからともなく蛮刀が引き抜かれる。意外に艶のあるその曲刀が振り上げられると同時に、その頭上に、モンスターを示す赤いカラー・カーソルと、プレイヤーの二倍はあろうかという量のHPバー。そして、ネームタグ。書かれた名前は、《鍋魔人のジンバ》。
視界脇でそそくさとN
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