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錬金の勇者
12『鍋魔人(?)との遭遇』
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の注目を集めた。

 SAOの利益の一部を提供する代わりに、《錬金術》の詳細情報をくれ、などと茅場に言われれば、ほいほいと付いていきそうだな……とヘルメスは思う。


 さて、《ランプの村》に辿り着いたヘルメスが、まずとった行動は、例の露天商を探すことだった。それを見つけられなければ、《錬金釜》獲得だとかなんだとか言っている場合ではない。

 《ランプの村》は、中世ヨーロッパのさびれた農村、といった雰囲気を立てている。なぜ《ランプの村》と言われているかというと、この村の中心にある巨大なカボチャランタンが、ハロウィンの日だけ光り輝くからだという。つまりは限定イベントなわけだが、ハロウィンじゃない日はただのさびれた村に置かれたドデカいカボチャでしかない。さらに哀れなことに、このいかにもクエストフラグ然としたカボチャを、スタート地点としたクエストは、ハロウィンの日に限定解放されるクエスト、オバケカボチャ討伐……正式名称を《南瓜城主の帰還》以外にはない。

 このクエストは、最寄りのダンジョンである《パンプキン・フォートレス》の最奥部に限定出現する超巨大カボチャオバケモンスターを撃破する、という物で、なかなか侮れない強さのオバケカボチャを、攻略組で二時間近くかけて討伐したのはいい思い出である。

 そんなわけで、《圏外村》であることも相まって、この村に訪れる者はもうほとんどいない状況となっている。ヘルメスに《錬金釜》の情報を教えてくれた、槍使いのプレイヤー……イゾルトがうわさを聞きつけた当初は、この村にはその喋る鍋(より正確には釜)を入手しようとやってくる物好きなプレイヤーが多くいたらしいが、現在は皆諦めたのか、誰もいない。

 しばらく村を歩くと、問題の露天商が見えてくる。《ベンダーズ・カーペット》という、プレイヤー/NPC問わずに、固定店舗を構えない露天商を営む商人クラスの存在ならば、誰もが必要とするアイテムだ。ヘルメスの様に市場に出て物資を売るだけのプレイヤーならば、市が開かれるときに仮店舗を借りられるので、このアイテムは不要となるのだが。

 《ベンダーズ・カーペット》の最大の利点は、上に置いてある物資の耐久値が減少しないことだ。また、巻き取る時に上に置いてあるアイテムは全て専用のストレージにしまわれる。代わりに、一定の広さがあるエリアでしか広げられなかったり、ダンジョン内では使えないなどの欠点があるのだが……。

 そのカーペットの上に、いくつかの装備品アイテムなどと一緒に、一つの非常によく目立つ物体が置かれていた。高さは30〜40cmほどか。艶消しのダークグレーの素体に、金色の装飾が良く映える。大小二つの釜飯丼を重ねた様なその不思議な外見は、間違いなくヘルメスの知る《錬金釜》の物であった。

「……らっしゃい」


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