第1部
第1楽章 内乱
第2話 開幕
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―エッ?」
重傷者の傍らに居た兵士が絢に手助けを頼もうとした時、銃声が響き渡った。呻き声を上げていた負傷者が沈黙し、彼女の持つ拳銃の銃口から、白い煙が伸びていた。
「助からない兵士は射殺しろ。それが苦痛から救ってやれる最後の手段だ」
「一体どういう事ですか、一等軍曹!!
まだ、後方に送ってやれば助かるかもしれないじゃないですか!!」
若い兵士が絢に猛然と抗議する。補充で来た新兵の一人だ。
「後方に送る間にどれだけの時間が必要になるのか分かっているのかね?
それまでにはこいつは死んでいた。苦痛を無くしてやる事が、我々の唯一できる戦友への手向けだ」
「で、ですが!!」
「君は上官の命令に反抗するかね?」
「クッ……」
「Yesか、Noか?
さぁ、どっちだね?」
「………はい……」
「よろしい、さぁ、仕事を始めたまえ」
絢がそう言い終ると、周囲に短い銃声が何度も響き渡った。それと共に重傷者の呻き声が消えていく。
「第2分隊は動かせる者を臨時救急所へと連れて行け。第3分隊は死傷者の装備は剥ぎ取って、臨時の死体安置所に送って来い。残りは我々に続け。このエリアの戦闘司令部へと向かうぞ。状況を掌握する」
「了解」
三村隼也少尉がそう言うと分隊長の一人が返事をする。残りの兵士もバラバラと動き出したその時、彼の無線機に通信が入った。彼は兵士達に背を向け、無線を繋ぐ。
【CPよりb-02へ。聞こえるか?】
「こちらb-02。どうした?」
【b-02。早速だが、問題発生だ。エリア外延部のストーン5-6から敵と交戦している、との連絡を最後に通信が途絶えた。至急、確認に向かえ】
「了解、現状はどうなっている?」
【敵部隊が前線を押し上げてきている。幾つかの部隊から通信が途絶えている。注意したまえ。
なお、HQは戦術機甲部隊を投入する事を決定した。あの貧乏性な司令部がだ。これは尋常じゃない。嵐になるぞ、02】
「了解。直ちに現場へと向かう。02、アウト」
三村の顔は段々と曇り、最後には深くため息を吐いた。その様子を見た絢は彼に尋ねる。
「どうでしたか、少尉殿?」
「問題発生だよ、軍曹」
三村の答えに絢は頭を振った。全く、何時も通りの最悪の日だ。
「またですか……。どうせ敵が反撃を開始したとの事でしょ?」
「その通りだ。司令部は戦術機甲部隊を送り込むようだ」
「それで片付けば良いのですが……。で、目的地は?」
「ストーン5-6だ。通信が途絶えたらしい。全滅してなければ良いが……」
「捕虜の人権は在って無い物ですからね。急ぎますか」
「ああ。もう間も無く“処理”も終わるだろうからな」
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