第1部
第1楽章 内乱
第2話 開幕
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る通りの向こうの敵に戦車砲と、機関砲で攻撃を始める。曳光弾が空気を切り裂き、砲弾の爆発が地面を揺らす。
最近、レオポルト2PSO戦車をレオポルト2A7+戦車に更新する計画が進んでいるらしい。若い連中がこの動きを連邦軍と全面戦争する為の布石だと噂話をしていた。全く、馬鹿馬鹿しい話だ。
その時、車列のそばを国内軍の2両のCV9040歩兵戦闘車に護衛されたAMV装輪装甲車が通り抜けた。その車体には赤十字が描かれている。そう、戦場救急車だ。誰かが負傷したのだろう。もしくは戦死したか……。
「良く見ておけ。油断すれば誰でもああなるんだ」
三村俊也少尉がそう言うと、沈黙が流れた。誰もが自分の死を想像したのだろう。絢は、私は楽に死ねそうに無いな、と微かに自らを嘲笑した。
車列は硝煙の漂う、安全地帯と呼ばれるエリアへと入った。
安全地帯中心部では、数多の車両が止められ、兵士達が歩き回っている。どうやら迫撃砲が降ってこようとも、銃弾に曝される事はないようだ。
そう思いながら山田絢一等軍曹は軽装甲機動車から降りた。小隊の車列を止める場所を聞くためだ。他の小隊は別の地区の担当だ。
「第1301部隊のb-02分遣隊だ。仕事に来た」
絢がそう言うと、一人の兵士が近付きこう言った。
「ようこそ、地獄のバカンスホテルへ!
あちらのホテルの裏に止めてください!!」
その兵士が指差した方向を見れば廃墟と化したホテルの傍らに道があり、誘導員と思しき兵士が立っている。
「分かった。兵士を下ろしてくる」
絢はそう言うと車列へと戻り、無線のチャンネルを小隊の周波数にする。
「運転手以外、全員を下車しろ。髪の毛一本忘れるなよ!
車両はホテル廃墟に居る誘導の兵士の指示に従え!
さぁ、動け。さもなくば、私から貴様らのケツに一発くれてやるからな!!!」
その言葉と共に兵士達が一斉に車両から飛び出した。皆、顔が真っ青だ。その時、何かが風を切る音が響いた。
「伏せろ!!」
誰かの悲鳴のような叫びが、騒音に包まれた世界に響き渡る。絢は咄嗟に地面へと身体を投げ出した。
爆発。重苦しい爆音が絢の鼓膜を揺さぶり、焼けた金属の匂いが鼻を衝く。そしてロースト・ビーフのような肉の焼ける匂いと新鮮な血の匂い。
「クソッタレ、誰か来てくれ!」
「おい、しっかりしろ!!」
「衛生兵!!」
兵士達が傷ついた仲間の為に衛生兵を呼ぶ声が周囲に響き渡る。だが、死に瀕して、助けを求める声には遠く及ばない。
絢は起き上がると、9mm拳銃を引き抜き、もう助からない兵士の下へと歩み寄った。彼女の目は冷たく凍っていた。
「軍曹、手伝って―――『パン!!』――
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